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論説 神社に関する意識調査 斯界の今後を切り開く鍵に

平成29年03月13日付 2面

 神社本庁では昨年十月に第四回「神社に関する意識調査」を実施した。この世論調査は、氏神の認知・参拝、神棚の有無や神宮大麻の奉斎など、国民一人一人の神社との関はりについて明らかにしようとするものである。
 今回の調査は、これまで実施された三回の調査とは異なった重要性を持ってゐる。調査は平成八年から十八年まで五年ごとに実施され、これによって十年間の変化を把握することができるやうになった。今回の調査は、さらに十年たった時点での調査であり、二十年間の傾向が示されてゐる。ほぼ同じ質問数、質問形式で二十年間に亙って実施された調査結果の意味は重い。
 この間に東日本大震災をはじめとした災害があり、伊勢の神宮では式年遷宮が執りおこなはれた。また各神社での式年造替などもあり、これまで以上に神社に注目が集まった。かうした影響も見え隠れしてゐるのが窺へる。



 信仰する宗教を持つ日本人は四一・二%と、十年前より四ポイントほど高くなった。それでも調査当初(四七・六%)から比べれば低いのであるが、「祖先を敬うこと」を大切だと思ふ割合の増加など、誤差とは思へない宗教への関心の昂りが散見される。
 氏神の認知率は一貫して減少し、「知っている」は五九・五%にとどまった。また、知ってゐても「お参りしない」と回答した人と、「知らない」との割合の合計が半数を超えた。他方で、「知っている」人の参拝頻度は全体的に高くなり、好ましい印象を持ってゐるとの回答も過去最多だった。その具体的な内容では「地域の人々を守っていてくれる」が大幅に増加した。このやうに氏神を巡っては二極化が生じてゐるやうに思へ、無関心化する多数派と、地域との?がりを改めて大切と感じてゐる集団に分化しつつあるのかもしれない。地方移住を希望する者が増加する昨今、地域における氏神の重要性を再認識する傾向が一部に存在するのではないか。



 家庭祭祀で重要な役割を持つ神棚の保有率に関しては、過去最低の結果となった。平成八年に五割を超えてゐた保有率は、二十年間で十ポイント下がって四一・二%となった。二十一大都市で二九・二%、東京ではつひに一九%と二割を切るまでに減少した。家庭における無宗教化は他の項目や調査でも確認することのできる事実である。
 神宮の認知は、これまででもっとも高かった(九八・三%)。しかし、神宮大麻を受けてゐる人の割合は過去最低で一三・七%にとどまった。二十一大都市では八・八%、東京区部ではわづか一・三%である。この四一・二%といふ神棚保有率に比べ、神宮大麻の奉斎率は一三・七%、氏神神札は二一・六%で、いづれも数値に開きが見られる。ここに教化の余地もあるやうに見えるが、人口や世帯は大都市を中心にますます集中することが予想されてをり、大都市での現状を基本とすると、今後も増体には厳しい状況が予想される。
 神札を受ける方法にも二十年間の間に明確な傾向が見て取れる。つまり、地域による頒布の陰りと個人的な志向の高まりである。「地域の世話人を通して」が四割ほどに低下したのに対し、「神社へお参りして」と「伊勢神宮へお参りして」は一貫して増加傾向を示してゐる。



 一昨年四月、斯界の現状を把握するため一万三百人余の本務神社宮司を対象に「神社・神職に関する実態調査」が実施された。こちらは七十問を超える大規模なアンケート調査で、すでに二百頁を超える報告書が作成されてゐる。二十年に亙る世論調査と大規模な実態調査は言ってみれば内と外から斯界を見たものであり、その結果は現状と戦後七十年の変化を把握することのできる重要な基幹資料の一つである。
 これらの調査はもとより社会科学的な調査として十分に堪へるものではあるが、より重要なのは斯界が将来の施策のために利用することである。この点はくり返し強調されてきたが、残念ながらこの二十年間を見ても、必ずしもさうした状況になってゐるやうには思へない。近年、各神社庁を中心に多くのアンケート調査が実施されるやうになってゐる。調査結果の共有が望ましいのは当然であるが、企画の段階から情報交換をすることが必要となるだらう。分析や意見交換が頻繁におこなはれることが、斯界の今後を切り開いていく一つの鍵になるのではないか。
平成二十九年三月十三日

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