文字サイズ 大小

論説 教誨師養成研修会 斯界挙げて後継者養成を

平成29年04月03日付 2面

 本紙今号に掲載の通り三月二十一・二十二の両日、神社本庁教誨師養成研修会が開催された。この研修会は神社本庁教誨師の養成のため三年に一度開催されてゐるもので、教誨師候補者や新任教誨師など約三十人が参加。期間中は現任教誨師を講師に教誨・矯正の概要、教誨師としての心構へ、実践事例についての講義などがおこなはれた。
 教誨師は刑務所や少年院など各地の矯正施設において宗教教誨をおこなひ、被収容者の信教の自由を保障しつつ精神的安定を与へることで、その改善更生と社会復帰に尽力。活動の特殊性から一般社会ではなかなか認知されてゐないものの、宗教者として極めて公共性の高い対社会的活動に努めてゐるといへる。先日、神社本庁も参画する日本宗教連盟が「宗教者が担う社会活動―宗教教誨師、チャプレン、臨床宗教師の現場から―」と題する宗教文化セミナーを開催したが、神職をはじめ宗教者による宗教教誨といふ活動は、宗教と社会との関はりを改めて見つめ直す意味でも重要といへるだらう。



 神社本庁では例年、現任教誨師を対象とする教誨師研究会を開催。そこでは近年、刑事施設入所者の六割が再入所者であるとの現状などから再犯防止が大きな課題とされ、その対応として出所後の「居場所=住居」と「出番=仕事」の確保の必要性がたびたび指摘されてきた。被収容者の釈放後については、釈放前教誨を含めた前段階における教誨師の活動に加へ、住居や就業先など帰住環境の調整・相談に従事する保護司の役割が重要となるが、この保護司にも多くの神職が委嘱されてゐる。
 ただし出所後の受け入れ先となる地域社会に目を向ければ、「孤独死」や「無縁社会」などの言葉に象徴されるやうに、地縁・血縁をはじめ伝統的な地域共同体におけるやうな人間関係の稀薄化が進行。また、かねて契約社員・派遣社員など非正規雇用の増加が顕著となってをり、再犯防止のための「居場所」「出番」の確保が決して簡単でないことは容易に想像できる。
 日々地域社会の安寧を祈ってゐる神職の立場としても、犯罪防止による安全な地域づくりは重要な課題であらう。再犯防止に取り組む教誨師や保護司の活動を円滑にする意味でも、地域社会のあり方、とくにその紐帯の強化について神社関係者一人一人が常に強い関心を持ち続けなければなるまい。



 神社本庁の教誨師については後継者養成が課題となって久しく、今回の教誨師養成研修会も、その対処として昭和六十二年に始められた。加へて平成十九年には後継者養成を視野に入れて神社本庁教誨師規程が改正され、「本庁教誨師の従事する教誨事業並びに事務を補助するための人員」として、「本庁教誨師補助員」の委嘱を可能とするなど制度整備もおこなはれてゐる。
 もとより宗教教誨は極めて特殊な活動であり、研修会・研究会における研鑽が重要であることはもちろん、個人の資質や性向などに左右される部分も大きいといへる。またその活動の性質上、厳格な遵法精神や高い社会的関心、高潔な人柄等が求められることはいふまでもなく、決して容易に務まるやうなものではない。しかし、さうした教誨師を務める上での難しさや厳しさは、神職をはじめ宗教者に寄せられる社会的な期待がいかに大きいかといふことの証左でもあらう。そもそも地域の精神的中核である神社に奉仕し、「社会の師表」たるべき神職としては、常に誰もがその任に堪へ得るべく日々研鑽に努めなければならない。資質や能力はもちろん、なにより情熱と使命感に溢れた有為な人材の輩出が望まれる。



 神道教誨の充実は単に被収容者の矯正改善や再犯防止のためだけではなく、地域社会の紐帯の強化といった観点、ひいては地域共同体における神社・神職の果たすべき役割を再確認するといふ意味でも極めて重要である。二万二千人の神職に対して本庁教誨師はわづか百四十人ほどに過ぎないが、一部の限られた神職による特殊な活動とすべき事柄ではない。
 その尊く地道な活動に対する理解を深めつつ、社会的な意義・役割の大切さをより広く共有することが肝要であらう。また、そのやうな過程を通じて、斯界を挙げて後継者の養成を図るやうな取組みが求められてゐるといへるのではなからうか。
平成二十九年四月三日

オピニオン 一覧

>>> カテゴリー記事一覧