文字サイズ 大小

論説  諸社振興と神社界発展に向け過疎地神社の施策方針

平成29年04月10日付 2面

 少子高齢化・人口減少化社会を経験してゐるわが国の現況下で、神社界がこれからいかに歩むべきかといふ課題は、ますます差し迫った身近な問題となってゐる。少子高齢化がさまざまな面で神社の活動や維持に影響を与へてゐることはこれまで縷々指摘されてきたが、併せて人口減少へ突入した社会の流れも見据ゑておく必要がある。
 一般に人口減少社会とは出生数が低下し、死亡者の数がそれを上回る状況が継続してゐる状態をいふが、その根柢にある大きな社会問題が過疎といふ状況であることはいふまでもない。



 神社本庁では昨年十月に「過疎地域神社活性化推進委員会」(吉川通泰委員長)を設置し、現在は具体的施策の方針を示す「実施要項(案)」が纏められつつある。要項案では、各神社庁での当該問題に対処する委員会設置、推進地域の指定と相互扶助体制の構築、取組み状況の検証、数地区を特区として神社庁と本庁とが共同で事業を進めることが主な柱となる予定である。
 過疎化の大きな要因として、人口の流動化が関係する。これは地方だけの問題ではなく、都市部においても生起してゐるが、重要なことは地域間格差に留まらず地域内部でも格差の広がる状況だといへる。かうしたなかで新たな施策を展開するにあたり、改めて(一)組織的な取組み、(二)活性化と格差、(三)相互支援の三点につき考へておきたい。



 まづ(一)であるが、要項案では各神社庁において施策推進に取り組む委員会等の設置が考へられてゐる。この点で神社庁の役割と指導力が一層重要となる。確かに過疎地域といってもそのありやうは区々で、現状と課題を現場に即して把握してゐるのは神社庁といへる。ただ、これまでのやうに「地域」の神社振興といふ漠然とした捉へ方ではなく、「過疎地域」の神社といふ対象を的確に把握した組織的な取組みとなるのであり、従前の神社庁支部単位といふ枠組みを越えた動きや観点での対処もポイントとならう。そのためには、地域分析の専門的な知見も取り入れながらの対象把握が必要となる。
 また、施策展開の上ではしばしば総論賛成、各論反対といふ状況も起こり得るため、実行主体や組織への信頼、現場の意見の取り上げ方や対象指定時の客観性を如何に担保するかが問はれてくるであらう。本庁としても神社庁や指定地域の神社とともに歩む「協働」への期待が強く寄せられようし、その組織的力量が改めて問はれることとなる。地域の神社の声や視点を共有することが協働に繋がるものといへよう。



 (二)については、「活性化」とは何かといふ問題について随時議論を重ねる必要があらう。今日、地域・地方の活性化との表現が溢れてゐるが、その場合には経済面での視点や判断に傾きがちであり、集客競争など各種の手が尽くされる。それが可能な地域もあれば、かへって困惑する場合もあり、また地域差を無視したやうな政策も展開される。
 神社界では活性化が神社振興と同義的な意味合ひで理解されてゐるが、神社が存在することで有意な生活が送れる場合もある。さうした見極めやこれまで紡いできた地域との結び付きを繋ぎ留めることも振興といふ観点として大切ではなからうか。決して華やかな事業を展開することだけが活性化ではなく、さうしたことを地域に発信することも神社の役目としてあり得よう。
 最後の(三)に関しては今日、地域内における繋がりの恢復が求められてゐる。とくに東日本大震災後の復興における新たな互助の創生が議論され、地域の伝統文化、祭礼行事の役割に改めて眼差しが注がれてきた。そこでの議論として、これまで内部的に支へ合ってきた相互扶助のあり方に対し、外部の力を取り込んだ共助の構築が摸索されてゐる。神社界でも地域においては、神職間の祭典協力をはじめ、拠点神社からの神職派遣による協力体制が築かれてきてをり、さうした実践例の情報を共有し、地域ごとのあり方を展開することも重要とならう。そのためには、自己の神社だけではなく、他の神社への関心を高め、現況に寄り添へる全国神社の新たな連携と、何をどのやうに支へ合ふかの智慧と工夫の提示が喫緊の問ひかけとなる。
 かうしたことが、「諸社の振興なくして神社界全体の発展はあり得ない」との認識の具現化に繋がってこよう。
平成二十九年四月十日

オピニオン 一覧

>>> カテゴリー記事一覧