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【新刊紹介】平泉澄著『首丘の人 大西郷〔新装版〕』 維新の功臣との「対話」 帰幽後に刊行の「遺言」

平成29年06月12日付 6面

 「首丘の人は、昔を忘れず、恩を受けては必ず報謝せむとする、人なつかしい性質に違ない。果してその様な性質であれば、必ずや他の人々もその真情に触れて感激し、敬愛思慕してやまないであらう」――西郷隆盛は、まさしくその人であった。

 著者は、明治の光輝を曇らせた安政の大獄にまで遡り、その原因をさぐるなかで、わが建国を神武天皇に見るか、それとも徳川家康に見るか、といふ江戸時代を通じて争はれた国体観の違ひにたどり着く。つまり、幕府が前者の側に立つ京都や水戸を中心に徹底的に弾圧したのは、この宿年の恨みからであった。
 だが、わが国には時代を正しく見る者を正しく評価する者が、必ずどこかにをり、または必ず現れてくることを、著者は本書で何度も教諭する。
 「かすかに英傑嗚咽の声を聞くが如き感じがした」と擱筆して帰幽後に公刊された本書は、已むに已まれぬ大西郷との対話記録であり、まさしく著者の遺言であった。
〈本体1800円、錦正社刊。ブックス鎮守の杜取扱書籍〉
(國學院大學教授・西岡和彦)
関連書籍
[31690166] 首丘の人 大西郷 <新装版>
1,800 円(本体価格)
平泉澄 著 / 錦正社
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