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論説 山積する課題を前に団結を 評議員会を終へて

平成29年06月12日付 2面

 神社本庁の評議員会を中心とする斯界恒例の青葉会議が終はり、季節は若葉から深緑の候へとめぐりつつある。
 本紙前号に掲載の通り、評議員会においては七月からの新年度を前に今後の本庁施策・業務を踏まへた一般会計歳入歳出予算を決定。また評議員からの提出議案として、今上陛下の御即位三十年を控へての皇室敬慕の念の一層の喚起、後継者問題解決に向けた神職養成及び階位取得制度の検討、少子高齢化・過疎化が進むなかでの神社奉護と祭りの継続、明治維新百五十年にあたっての精神継承と理念啓発、元号の意義再確認と次世代への継承などに関する七件についても決議した。このほか自由討論においては、不活動神社対策について一層の協力体制の構築を求める山梨県の総代評議員からの熱意溢れる意見や、福島県神社庁における過疎化・少子高齢化に関はる神社実態調査を踏まへた提言などもあった。



 この評議員会に先立ち、本庁役員会では第二期となる「三カ年継続神宮大麻都市頒布向上計画」と、同じく次年度から三カ年継続となる「教化実践目標」を決議するとともに、昨年から検討が進められてゐた「過疎地域神社活性化推進施策実施要項」を諒承。昨年の評議員改選と新執行部発足から一年が経過し、斯界における現在の問題関心とその対策の方向性が明らかになってきたといへる。
 とくに自由討論で福島県神社庁長が「今回の評議員会のキーワードの一つは過疎化・少子高齢化への神社界の対応であらう」と指摘し、また予算案の審議に際して、過疎地域の活性化のみならず都市の「消滅可能性」を見据ゑた施策を検討すべきとの発言もあったやうに、当該問題への対応が喫緊かつ重要な課題であることはいふまでもない。次年度予算では不活動神社対策費・神社振興対策費がそれぞれ増額されてをり、かねてからの不活動神社対策事業、さらに新たに実施される過疎地域神社活性化推進施策も踏まへ、総代評議員からの意見にもあったやうに神職・総代を挙げての対応が求められる。




 加へて評議員会初日の議事においては、天皇陛下による昨年八月八日の「おことば」に鑑み、改めて敬神尊皇の大道を国民に示すことや、戦後七十年を経た憲法改正、神社をめぐる社会環境の変化などの諸課題に対し、本庁設立の原点に立ち返って大同団結を図り、評議員会において国体護持に関はる喫緊の案件について熟議することを求め、また本庁当局に対して設立理念の明確化や周知、施策展開に必要な教学理論を講究するための体制拡充などを要望する旨の発言があった。さまざまな課題を前に原点を顧みながら一致協力して対応を検討するとともに、その具体的な施策構築にあたっては基盤となる教学的な裏付けが必要であるとの主張は時宜を得たものであり、ぜひともかうした思ひを広く共有していきたい。
 この教学理論についていへば、先に触れた過疎対策なども決して無縁とはいへず、地域のなかで神社がいかにあるべきなのか、歴史的な経緯を踏まへて再確認するやうな取組みも必要だらう。また不活動神社対策においては法人合併なども検討されるが、戦後の宗教法人法に基づく法人格取得について、信仰面を踏まへた教学的側面を考慮しつつ、今後のより相応しいあり方を摸索するやうなことも可能なのではなからうか。




 一方、評議員会にあたっての総長挨拶では、「神社界に生きる者として恥づべき言動があらゆる手段を以て拡散されてゐる実情は憂慮にたへず、まことに残念」との発言があった。平成二十六年に同じく総長が、「神明に奉仕する神職として資質そのものを問はれるやうな、自己中心的な考へに起因した紛争が、絶え間なく惹起してをり、事によっては、司法の場での判断に委ねられるやうな問題が後を絶ちません」と述べたことに対し、本欄では「異例ともいへる発言」と評したが、今回もまた厳しい内容といへよう。
 神職の資質向上が後継者問題との兼ね合ひも含めて課題となって久しいが、山積する諸問題を前にまづは足元を固めて大同団結を図る意味でも、さういった人材育成についてもより積極的に力を注いでいきたい。もとより必ずしもすぐに成果が出るとは限らず、また一見迂遠に感じられるとしても、それが斯界興隆のためには必要不可欠だと信じるものである。
平成二十九年六月十二日

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