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杜に想ふ ゆらぐ灯り 八代 司

平成29年08月07日付 5面

 夏真っ盛りの今日この頃、全国各地では夏祭りや花火大会が開催されてゐる。夜空を焦がして大輪の花々が咲き、団扇を手にして着慣れぬながらも浴衣姿で歩く若い男女を見ると、まさに日本の夏を感じさせてくれる。しかし、昨今、見物客が増えたことや河原の空き地が減少したこと、さらには警備費用が増大したことなどさまざまな要因が重なって、長く続いてきた花火大会も各地で中止となってゐるとのことでいささか残念である。さういへば、先日放映されてゐた国民的アニメ「サザエさん」で、波平さんとマスオさんが夕涼みよろしく、煙る蚊取り線香を足元に玄関先の縁台に座って瓶ビールを互ひに注ぎあふ姿は実に風情があったが、もはやノスタルジックを感じさせるものであり、変はりゆく日本の夏の風景にあらためて考へさせられた。
 さて、神社界の知己の方々に神社や祭事で相談されて新たな取組みを考へる際、社殿や境内の灯りの見直しをしてみることをまづはお奨めしてゐる。
 現下、よほど山奥の小祠でなければ、裸電球一つだけぶら下がった社殿ももはや少なからうし、おほよそ殿内には煌々と蛍光灯が灯されてゐる神社が多い。
 じつは、その蛍光灯が明るすぎることこそが問題なのである。市販されてゐる蛍光灯は大別して、色調が三色あり、太陽光に最も近い昼白色や、青味がかった昼光色は覚醒効果があるとされ、道路の外灯のやうな白々しさを感じさせ、せっかくの神社の雰囲気を壊してしまってゐるのである。
 古くは「おみあかし」とも総称された御神前の雪洞や、参道の灯籠、境内の常夜灯など、鎮守の杜の奥深くに鎮まります社殿では、比較的に暗めではあるが、落ち着きと温かみがある電球色の蛍光灯が、社殿の木肌も美しく見せ、遠目にも参拝者に安らぎを与へてくれる。この際、電球交換時、社殿に相応しい雰囲気について今一度確認し、社殿内外の光量をあへて落とし、色調を変へてみることをお奨めさせていただく。
 神前に灯火を献じる灯明皿や和蝋燭、または松明や篝火、庭燎など、ゆらぐ火そのものの自然な灯りは、神々のみならず、人々をも魅了させることは、浄闇の神事に列したことがある方は納得いただけることと想ふ。しかし、文化財保護や安全性などの面を考へれば、電気照明に頼らざるを得ないのもまた現状である。私の故郷の夏祭りは「お涼み祭り」と呼ばれる、まさに神様の夕涼み。夕暮れから氏子区域を一巡する神輿に供奉して巡幸路を照らす大きな行灯型の灯火は「奉灯」や「お明かし」と尊称される。幸ひにして近頃は技術が発達し、総代が手にする提灯にも炎がゆらぐやうなLED光源が開発され、往時の雰囲気が醸し出されるやうになった。ぜひこの際、ユネスコ無形文化遺産に指定された祭礼でも導入を御検討いただければと切に願ふ。
(まちづくりアドヴァイザー)

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