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論説 青年神職の情熱への期待 夏期セミナーを前に

平成29年08月28日付 2面

 来たる八月三十・三十一の両日、「日本の心を紡ぎ伝へる~私たちの使命~」を主題とする神道青年全国協議会の夏期セミナーが神社本庁を会場に開催される。今年のセミナーは、「大御心をいただきてむつび和らぎ、国の隆昌と世界の共存共栄とを祈る」ことが青年神職としての本義であり、その実践につとめて大道を宣揚していくことが肝要との認識のもとで実施。世界に誇れる皇室の尊さを氏子・崇敬者に正しく伝へていくことを責務とする青年神職として、皇室をはじめ歴史・伝統文化に対する正確な知識を身につけ、平成の国造りに邁進すべく資質向上と独立自尊の精神を培ふことを目的としてゐる。
 昨年八月八日の「象徴としてのお務めについての天皇陛下のおことば」発表から、「天皇の退位等に関する皇室典範特例法」の公布を経た現在まで、皇室をめぐるさまざまな議論が続いてゐる。さうしたなかでの今回のセミナーは、斯界の尖兵たる青年神職として洵に時宜を得たものといへよう。主題にある「日本の心を紡ぎ伝へる」といふ使命を担ひ得る神職となるべく、ぜひとも熱心に研鑽を深めてほしい。



 二日間の期間中、初日には彬子女王殿下が「感謝のこころをつなぐ」との演題で特別講演をおこなはれる。また、続いて元宮内庁掌典職掌典次長・山田蓉氏が「宮中祭祀~その概要と変遷~」と題し、さらに翌日には國學院大學准教授の藤本頼生氏が「皇室の制度と歴史~現行皇室典範の課題から~」と題してそれぞれ講義をおこなふ。彬子女王殿下による特別講演はもとより、掌典としての長年の実践に基づく山田氏の講義、また多方面で活躍する気鋭の学究である藤本氏の講義は、いづれも極めて有意義なものとならう。その内容を十分に消化することができれば、参加者それぞれの今後の神明奉仕やさまざまな活動において、大きな糧となることは疑ひない。
 加へて、かねてからよくいはれるやうに、一神職としての研鑽といふことだけでなく、その成果をそれぞれが持ち帰って参加できなかった地元の会員と共有し、さらにその体験を氏子・崇敬者らに伝へていくことで、セミナーはより意義深いものとなる。参加者には、事前学習などしっかりと準備を整へて当日に臨むのはもちろん、その成果を広く共有しつつ、所期の目的を達成することを願ひたい。



 そもそもこの夏期セミナーは昭和六十一年、神青協の存在意義である「国家再興のため強力なる運動を展開せんことを期す」ため、戦後神社界の歩みと問題を総括するために開催された。八月四日から十三日までの連続十日間の期間中は、初日に戦後の斯界を牽引した葦津珍彦による基調講演があり、その後も神社本庁の組織論や運動論、政教問題、教学的課題などを主題に連日討議を重ね、全国各地から延べ八百人が参加したといふ。
 本欄ではかねてから、この夏期セミナーのことを振り返りながら、当時の青年神職たちの情熱などにも触れて、神青協へのさらなる期待と現今の課題などを論じてきた。とくに、のちに國學院大學学長を務めた上田賢治がこの第一回夏期セミナーについて、「ともすれば徒らな自己利益の追求か、逆に国際社会の力の陰に身を隠し、或は迎合する方向へと陥りがちな戦後同胞の中にあって、国家の理想と本質とを確認し、常に公の立場に生きて来た神道人の営みをこそ表象してゐる」と評して叱咤激励してゐたことは深く銘記されるべきであらう。



 第一回の開催から三十年以上が経過したが、この間も主題や内容を変へながら例年セミナーは続けられてきた。当初の参加者たちは、それぞれ各地で指導的立場になり、斯界の第一線を担ってゐることであらう。当時の情熱を忘れず、さらには上田の叱咤激励に応へ得るやうな活躍を続けてゐると信じるものである。
 内憂外患に晒されるわが国、さらには斯界の現状に鑑みても、青年神職には次代を担ふといふ自負と責任感を持ち、なにより「自己利益の追求」に陥りがちな昨今の風潮のなか、常に公の立場に生きて来た神道人として、今後のわが国そして斯界のあり方を考へてほしい。一人一人の参加者にとって今回の夏期セミナーが、さうしたことの契機となることを切に望みたい。

平成二十九年八月二十八日

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