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杜に想ふ お墨付き 八代 司

平成29年09月04日付 4面

 稔りの秋を迎へ、豊葦原瑞穂国との麗しい美称に相応しく、日本列島が黄金色に色づき、今年も豊作を感謝する秋祭りが各地でおこなはれ始めた。
 昨年十一月に国指定重要無形民俗文化財である山・鉾・屋台行事三十三件が一括してユネスコ無形文化遺産となり、今年は初めての秋祭りとなる。
 私も御縁をいただき、昨年来、いくつかの祭礼を奉拝する機会を得た。それぞれの祭礼では、麗々しく「祝ユネスコ無形文化遺産登録」との懸垂幕等が新たに山車に掲げられるなど、関係者からは一様に指定されたことを誇りとする歓びの声を聴いたが、その反面、いくつか気になる点も見えてきた。
 まづ登録との一報で、薬玉を割ったり、鏡開きや万歳三唱をしてゐるニュース画像に映る御歴々は、充て職として祭礼の保存会長をしてゐる首長がスーツの上に法被を着てインタヴューにコメントしてゐる姿がほとんど。なぜか全国ニュースでは袴姿の宮司さんの姿をつひぞお見掛けしたことがないのだがいかがであらうか。
 また先日来、ユネスコ無形文化遺産の「登録認定証」について旧知の数社の宮司さん方に伺ったところ、いづれも保存会にはもらってゐるが神社にはないとのことであった。ある祭礼については、市の文化財課に問ひ合はせたところ、市役所庁舎のロビーに掲げてあるとのことで早速に拝見に伺ったがどうにも見付けることができず、あらためて担当者の案内を受けてやうやく現物を確認することができた。しかも驚くことには、今までその場所を尋ねてゐた庁舎案内窓口の係員が背にする柱のまさに側面に掲げられ、ユネスコからの横文字のものと文化庁長官名の二通は、薄い額にこそ入れられてはゐるものの、祭礼の説明書き一枚すらない状況である。市長室に掲げるよりは広く市民に見ていただければとの市長の御意向とのことだが、陰となった完全な死角であり、担当者も苦笑するほどである。聞けば、ロビー周りを管理する他部署の許しが出ないからとのことであったが、失礼ながら、まさにお役所仕事な縦割り行政であり、極めて残念である。
 そもそもユネスコ認定へ向けては、各地元の行政機関が尽力されてゐたことは理解してゐるが、今後、行政主導によって祭礼が観光誘客のための単なる一具となってしまふ虞をも感じずにはゐられない。認定によって、自分たちの郷土の祭りが世界にも認められる素晴らしいものであることをあらためて知る契機となったことも確かである。まさにその「お墨付き」とも言へる「認定証」はただの紙切れ一枚と言ってしまへばそれまでであるが、そのやうなモノには関係なく、これまで通り、これからも各地の祭りが本義を忘れることなく次代へと受け継がれていくことを期待したい。
(まちづくりアドヴァイザー)

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