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杜に想ふ 国づくり 八代 司

平成29年10月02日付 5面

 衆議院の解散風が永田町を吹き荒れてから、野党はじめマスコミの煽動も後押しし、方々より「大義なき解散」と声高に揶揄されてゐる。しかし、彼の国からのたびたびのミサイル実験による挑発行為は国民の生命の危機に繋がってゐる。戦後、長く安穏としてゐたわが国ではあるが、記者会見で安倍総理が、まさに「国難とも呼ぶべき事態」とし、「国難突破解散」と銘打って解散を表明した。
 翌朝の新聞の経済欄には「アベノミクス成果強調」との大見出しとともに、「景気『いざなぎ』超えか」とあり、九月の月例経済報告は緩やかな恢復基調が続いてゐるとし、経済再生相からは「戦後二番目のいざなぎ景気を超える長さになった可能性が高い」との認識が示された。さらに報道では、景気拡大の期間が最も長かったのは、小泉内閣から福田内閣にかけての六年一カ月であり、「一部では『いざなみ景気』と呼ばれている」とも記されてゐた。元来、経済にも疎い私ではあるが「いざなみ景気」とは初めて耳にする言葉であった。
 さて「いざなぎ景気」は、これに先立つ「神武景気」や「岩戸景気」などとともに、戦後の高度経済成長を表現し、まさにわが国の天地開闢以来の未曽有の好景気をみごとに表した通称である。昭和三十一年度の『経済白書』での名文句「もはや『戦後』ではない」とともに、戦後日本の復興をも表し、現代史の一つとして教科書でも学んだ歴史的語句である。しかし、現代では、それらの時代も遙か遠く、もはや懐古的な映画に描かれる時代ともなった。
 随分と以前のことであるが、中学生の頃、アメリカ合衆国で短期間のホームステイをしたことがあった。その際、事前に私が興味を持ってゐることは何かと訊かれた時、「日本の歴史、とりわけ神話や神社」のことと答へてゐた。すると図書館司書をしてゐたホストファミリーが、英語版の『日本神話』の本を探し出し、わざわざ用意をしてゐてくれた。
 正確な書名や発行年は覚えてゐないが、ただ鮮烈に記憶してゐるのは、「国生みの章」の挿し絵として描かれる、いざなぎ・いざなみ二神が、なんとも厳めしい仁王像と、羽衣と裳裾を翻した天女の姿で表現されてゐたことで、まさに中華風といったタッチに驚愕した。
 むろん、わが国の天神地祇は山川草木に神鎮まり、いはゆる歴史上の人物でなければ、その尊容を表すことは極めて難しい。古人も有職故実や時代考証で表現方法に苦心され、御神体の神像や垂迹画など実にさまざまではあるが、日本人ならば共通してイメージされる姿はあるのではなからうか。
 ふと、現代の日本の若者は、イザナギ、神武、岩戸といった語句のそれぞれの意味を理解し、イメージすることができるのか、秋風に揺れる草花を見ながら考へてみた。
(まちづくりアドヴァイザー)

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