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論説 神宮大麻暦頒布始祭 当たり前の原点に立ち返って

平成29年10月02日付 2面

 本紙前号に掲載の通り、神宮大麻暦頒布始祭が九月十七日に伊勢の神宮で斎行され、来年正月に向けて全国各地で頒布される神宮大麻・神宮暦が神宮大宮司より神社本庁統理に託された後、引き続き、統理・総長より各都道府県神社庁長へと伝達された。
 各神社庁長に伝達された神宮大麻・暦は、各神社庁において頒布始奉告祭を斎行した後、支部を通じて各神社へと届けられ、神職・総代の手によって各戸に頒布される。それぞれ氏神神社の神札をはじめ、地方ごとの風習等に倣った神札や縁起物とともに神宮大麻・暦が届けられていく様子は、我々神社関係者にとってはごく当然のものであり、また今後も続けていくべきものである。ただ残念ながら、神宮大麻の頒布数は近年減少傾向にあり、大きな懸案ともなってゐる。
 頒布数の増減といふことは常々いはれてゐるが、一方で「頒布」だけではなく「奉斎」といふことが重要であることはいふまでもない。さうした側面から考へれば、家庭祭祀の振興、家庭での神棚奉斎の促進、神札を祀る意義の啓発などの施策にも、より重点を置かねばならないであらう。



 神社本庁がこれまで施策として実施してきた神宮大麻頒布対策として、団地対策をはじめ「指定県制度」や「モデル支部制度」などがあり、平成二十六年度からは「三カ年継続神宮大麻都市頒布向上計画」が策定され、二十九年度からはその第二期に入った。
 三年間に亙って実施された第一期の報告を踏まへて引き続いておこなふべき活動内容が検討され、すでに第二期の計画内容が示されてゐる。その第二期の資料に示された神社本庁活動計画においては、これまでのさまざまな計画に加へて、「家庭祭祀啓発チラシの作成」「インターネットを利用したスマートフォン向け広告などの検討」「神職・総代の研修会の開催」などが含まれてゐる。
 このうち、とくに研修会の項目に銘記されてゐる「斯界が神宮を『本宗』と仰ぐ所以、全国頒布の意義等、頒布奉仕者の意識の向上に努める」との内容は、昨今の斯界をめぐる状況に鑑みても極め
て重要といへるであらう。



 この「頒布奉仕者の意識の向上」については、神札を受ける立場の人々への啓発が必要となってゐる現状とも重なる部分があるのではなからうか。
 これまでは神札を当然のやうに受ける人々がゐて、氏神神社ではそのやうな氏子に対し、国家・地域・家庭の安寧を祈るといった信仰形態を支へる一環として神宮大麻・暦、そして氏神の神札などを頒布してきた。しかし現状では、社会環境の変化等の影響もあり、例へば家庭に神棚があるといふ前提が崩れてゐるといふ実態もある。さうした場合には、まづ神棚奉斎の意義を説き、続いてなぜ神宮の大御璽と氏神神社の神札を祀るのか、その意味を伝へていかねばならない。また神宮参拝の際に「授与大麻」を受けたことを理由に「頒布大麻」の拝受を断られるやうな場合には、神楽殿で受ける「授与大麻」と、年末に頒布される「頒布大麻」との違ひについて説明が必要なこともあらう。さらには喪中での過度の遠慮など、一昔前までは考へられなかったやうな事例も聞かれるやうになって久しい。
 それゆゑに、神社本庁・全国神社総代会では「神宮大麻 頒布奉仕者のために」といふリーフレットを作製して啓発に努めてゐるのであり、このリーフレットは、実際に頒布活動に携はる奉仕者のために作られたものとして、必要な要点が上手く纏められてゐる。



 ある種の暗黙の了解のもとで、言ひ換へれば当然の共通理解のもとでおこなはれてきた神宮大麻・暦の頒布について、もし頒布奉仕者においても、これまで当たり前とされてきた共通認識が欠如してゐるとすれば、それは大きな課題といへよう。
 くり返しになるが、重要なのは頒布数の増減だけではなく、まづ奉斎の意義の大切さを論ずべきといふことである。それが「斯界が神宮を『本宗』と仰ぐ所以、全国頒布の意義等、頒布奉仕者の意識の向上に努める」といふ施策にも直接繋がることとならう。全国の頒布奉仕者の絶大なる尽力に改めて感謝と敬意を表しつつ、必要な場合にはぜひ今一度、原点に立ち返って考へることを切に願ふものである。
平成二十九年十月二日

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