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論説 教誨師研究会 尊く重い使命を担ふ意義

平成29年10月09日付 2面

 本紙前号に掲載の通り、第六十八回神社本庁教誨師研究会が九月二十一・二十二の両日、愛知県名古屋市の若宮八幡社などを会場に開催された。
 「教誨活動の技能向上について」を主題とする今回の研究会は、他の教誨師の実践方法等について見聞を広め、それぞれの活動における参考にするとともに、現状の課題を共有することで今後の教誨活動の質を向上させることを目的とし、すでに永年に亙って教誨師として活動実績のある神社本庁教誨師を講師に事例発表を実施。さらに分散会・全体会を通じ、実践的技術の向上をはじめ、今後の教誨活動の充実に向けた情報交換などもおこなはれた。
 本庁教誨師については、今年六月末に平成二十六年からの三カ年の任期を終へ、新たに向う三年間の新規委嘱がおこなはれてゐる。もちろんその多くは引き続いての委嘱ではあるが、今年三月に教誨師候補者や補助員などを対象に開催された「神社本庁教誨師養成研修会」の参加者なども含め、今回からの新任者も委嘱されてゐる。近年の研究会においては、刑事施設の職員をはじめ、犯罪や法律、心理学等を専門とする研究者による講義などが実施されてきたが、新規委嘱がおこなはれたこの時期に、先輩教誨師から具体的な教誨活動の実践事例について具に話を聞く機会が設けられたのは、洵に意義深いことであったといへよう。



 この事例発表においては、とくに個人教誨における被収容者との一対一での対話を中心に、その時々の思ひも交へつつ詳細な内容が語られた。さまざまな苦労や葛藤などを重ねながらも、「やりがひを感じてゐる」「貴重な経験と、良い勉強をさせてもらってゐる」「今後も被収容者を出所まで見送る活動を続けていきたい」との話が聞かれたことは、とても心強いものといへよう。教誨師については、かねて後継者養成が大きな課題の一つとなってゐるが、かうした先輩教誨師の実体験なども参考にしつつ、次代を担ふ有為な人材が育ってくれることを期待したい。
 事例発表ではこのほか、教誨活動に臨む際の心構へや留意すべきこととして、「一方的に話をするのではなく、相手の話も一所懸命に聞くこと」「対象者に寄り添ひ共感すること」などが挙げられてゐた。教誨師と被収容者として、教誨の場で向き合ふ両者の立場が大きく異なることはいふまでもないが、まづは生身の人間同士としての信頼関係を築くことが重要であるといふ。もちろん、さうした形での信頼関係の構築は何も教誨活動に限って重要なのではなく、日常の社会生活においても基本といへるだらう。



 一神職としても、総代や氏子・崇敬者をはじめ一般の参拝者、さらには職場の同僚などと良好な人間関係を築いていくことは、神社の護持運営をはじめ日々の神明奉仕の上で極めて大切な要件である。例へば自身の意見のみ声高に主張したり、相手の考へを頭から否定したりしてゐては、互ひの立場がいかなるものであっても信頼関係など築くことはできまい。さうした意味では、教誨といふ特殊な場面において対象者と真摯に対峙することで、一人の人間としての人との接し方、そのあり方について、より強く意識させられるといふことではなからうか。
 さういった、時に身を削るやうな思ひをしつつ、教誨師は日々の活動を続けてゐる。改めて、神明奉仕に加へて神道教誨といふ極めて特殊かつ重要な活動に尽力してゐる全国各地の教誨師に敬
意を表するものである。



 受刑者や少年院在院者を対象とし、その改善更生と社会復帰に寄与するといふ教誨師の使命は極めて尊く重い。また聖職者としての神職が、その一端を担ってゐるといふ事実は、何も教誨師として活動してゐる神職のみならず、二万一千人の全国すべての神職にも関はることではないだらうか。つまり、地域社会において神職が、さうした尊く重い使命を託される存在として今後も認知されるべく、神職一人一人が日々の神明奉仕に努めなければならないといへるであらう。
 このたび新たに委嘱された教誨師の活躍に期待するとともに、広く斯界全体としてその活動への理解を深めつつ、後継者の養成を含め、それぞれが可能な範囲で支援・協力できるやうな体制作りがなされることを望みたい。
平成二十九年十月九日

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