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論説 十月定例評議員会 「万機公論に決すべし」

平成29年10月30日付 2面

 本紙今号に掲載の通り、神社本庁の十月定例評議員会が去る十月十九日に開催された。
 会議では、平成二十八年五月定例評議員会における評議員提出決議案件等の処理結果、二十八年度の本庁業務報告や一般会計歳入歳出決算をはじめとする各種会計決算が承認され、さらに決算確定を受けて編成された二十九年度の補正予算案を決議。また本会議での理事補欠選挙ののち、臨時役員会においては八月末に辞任した小串和夫副総長の後任として吉川通泰氏の就任などが決まった。


 このほか会議冒頭においては、神社本庁の百合丘職舎売却について、第三者らによって組織された調査委員会からの報告があった。この百合丘職舎の売却に関しては、昨年の青葉会議の直前に指摘があり、これまでの評議員会においても質疑応答がなされてきた。今日までの間、任期途中に副総長が辞任するといふ異例の事態となり、職員の免職・降格等の処分もおこなはれたが、全国八万の神社を含む組織としての神社本庁はもとより、各地の神社を支へる氏子・崇敬者、また執行部や代々木の事務所に働く職員らにとっても極めて遺憾なことといへよう。評議員会でも現状を憂慮・懸念する多くの意見が聞かれたが、いづれにしても、この一年半の間におけるさまざまな行為が齎した厳然たる結果として、真摯に受け止めねばなるまい。
 職舎売却をめぐっては、一般紙によっても報じられるなど、神職や氏子・崇敬者などの神社関係者をはじめ広く世に知られることとなってゐる。評議員会における調査委員会からの報告に際しては、手続き上の課題や最終的な責任の所在などを含めさまざまな質疑がおこなはれた。議長からの諒承を求める発言に対して賛同の拍手が少なかったことは、評議員それぞれのさまざまな思ひを反映したものでもあったのだらう。
 監事の役割や財務規程のあり方などについて、慎重に検討が進められてゐるとのことだが、今後とも常に真摯に対応することが求められてゐるといへよう。


 一方、評議員会において当面する懸案の一つとして挙げられてゐたやうに、来年は明治改元から百五十年の節目を迎へる。わが国は近代国家としての草創期において、明治天皇が天神地祇に誓はれた「広く会議を興し、万機公論に決すべし」との一文に始まる「五箇条の御誓文」を国是として掲げつつ、明治維新といふ偉業を成し遂げた。ただ、その過程は前史を含めて必ずしも順風満帆なものではなく、そこにも数多くの遺憾かつ悲劇的な事件・事柄があったのである。
 例へば、今年が歿後百四十年にあたる西郷隆盛の死は、その最たるものの一つといへるだらう。維新第一の功臣ともいへる西郷は西南の役において鹿児島・城山に散り、さうした西郷の死をも乗り越えながら、わが国は近代国家として飛躍的な発展を遂げたのである。西郷はまづ野に下り、あくまで理義を重んじて決して卑怯・卑劣な手段は用ゐず、もとより逃げも隠れもせずに堂々と戦った。現代において西郷ほどの人物を求めるのは酷であらうが、せめてその精神を尊いと思ひ、自らを省みるやうな感受性だけは大切にしたい。


 今回の評議員会では、近年の神社界において活溌な議論の機会があまりないことを憂へる意見が聞かれた。本庁の理事・監事や評議員の役割にも言及があったが、役員会や評議員会で真摯かつ活溌な議論があればこそ、より健全な組織運営も担保されよう。
 そのやうな意味でも、明治百五十年を控へた今こそ、改めて「広く会議を興し、万機公論に決すべし」との主意を深く胸に刻みたい。「五箇条の御誓文」に対する群臣の奉答書に、「勅意宏遠、誠に以て感銘に堪へず。今日の急務、永世の基礎、この他に出べからず。臣等謹んで叡旨を奉戴し死を誓ひ、黽勉従事、冀くは以て宸襟を安じ奉らん」とあるやうに、我々もさうした覚悟を常に忘れてはならないだらう。
 日々ひたすら神明奉仕に励む全国の神職・総代をはじめとする神社関係者、神社本庁の名の下に集ふ全国の同士が一致協力しながら、それぞれ身の丈にあった地道な活動を続けることから始めたい。

平成二十九年十月三十日

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