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論説 総選挙を終へて 憲法改正にはづみをつけよ

平成29年11月06日付 2面

 十月二十二日に実施された衆院選で、自由民主党は二百八十四議席を獲得して大勝した。この選挙の結果でとくに注目されたことは、いはゆる「改憲勢力」が八割を占めたことである。
 すなはち「加憲」の立場をとる連立与党の公明党の二十九議席と、改憲に前向きな野党の日本維新の会の十一に、新たに誕生した希望の党の五十の当選者を加へれば、なんと改憲の発議に必要な三分の二をはるかに超える五分の四の勢力にまで増大したのである。
 立党以来、憲法改正を党是としてきた自民党は、今回は選挙公約の重要な柱の一つとして憲法改正を掲げて戦った。そして自衛隊明記、教育無償化、緊急事態対応、参議院合区解消の四項目を中心に、改憲原案を国会で提案・発議して国民投票をおこなひ、初の憲法改正を目指すことを公約した。我々は自民党のこの公約の速やかな実現を大いに期待して見守っていきたい。

 しかし改憲勢力が八割を超えたとはいへ、今のところ主導する自民党には心配なことがいくつかある。一つは党の有力な改憲推進の責任者だった高村正彦副総裁と保岡興治憲法改正推進本部長の二人が、今回揃って引退したことである。これは党と国会にとって大きな痛手で、早急に体制の強化が望まれる。
 第二に、国会に提案・発議される自民党の改憲原案が、いつ頃国会に示されるのか不明な点である。安倍晋三首相は、選挙後の記者会見でまたも「スケジュールありきではない。民意を得なければならないのは国民投票だ。国民的な理解を得るやう努力したい」と語ったが、素案でもよいから早く提示してもらはなければ、国民の理解は進まない。
 三つ目は、公約に掲げた四項目について、まだ党内で議論が集約できてゐないことである。肝心の九条に自衛隊を明記する案についても、一項と二項を残したまま加憲する案に対し、二項を削除して「国防軍の保持」を明記した党の改正草案との絡みで異議を唱へる議員も存在する。早急に党内議論を開始して意思統一を図る必要がある。

 安倍首相の今回の「国難突破解散」と総選挙は、極めて困難な岐路に立つ現在のわが国の今後の行方を決定づける重大な意味を持つものであった。その結果、安倍首相のもとで自民党による長期安定政権が維持されることが確定し、国の内外に安心感と安定感を与へることになったのは何よりであった。
 しかしながら、現下の国際情勢とわが国が直面する諸問題に鑑みれば、首相が憂慮するごとく、まことに危機的で厳しいものがある。安倍首相は「国難」として、選挙中とくに北朝鮮問題と少子高齢化問題を取り上げて強調したが、国家財政ままならぬなか、国土・国民を守る防衛力の強化と急速に進んだ出生率の低下による人口減にどう対処すべきかは、わが国にとってまさに危急の難儀といふべきものである。それは一人一人の国民にとっても、税の負担増を含め真剣に考へ、覚悟せねばならぬ重い課題なのだ。
 北朝鮮の核とミサイルによる威嚇と挑撥に対して「アメリカ・ファースト」の米国・トランプ大統領は、とり得るあらゆる軍事作戦を考へてゐるといふが、では一体わが国は単独で何ができるのか。年ごとに増大してくる尖閣諸島に対する軍事大国・中国の脅威に対し、わが国自身の防備の強化をいかにすべきであらうか。
 少子化の問題もまた深刻だ。出生数は減少傾向が続き、昨年はつひに九十万台に落ち込んだ。では何か有効な打つ手はあるのか。これから先、生産労働人口は減少し続け、自衛隊員や海上保安庁、警察、消防など、国の防衛と地域社会の安全に欠かせない必須の要員の確保すら危ぶまれる事態を迎へる。もはや国政において、政治家が与野党で対立せねばならない政策の余地は狭まり、協力し合はねば国難の突破は困難な時代に突入してゐるのである。

 神道政治連盟は、今回二百七十二人の候補者を推薦し、小選挙区と比例を合はせて二百五十二人が当選した。議員諸公には、これからまた国会議員懇談会のメンバーとして、皇室や憲法改正の問題などを中心に活躍してもらはねばならない。幸ひ再来年の夏の参院選までは国政選挙の予定はない。そのため改憲の国民運動にとっては、来年の一年間が最大の勝負所とならう。改憲運動にはづみをつけるためにも党と国会での早期の審議開始を望みたい。
平成二十九年十一月六日

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