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論説 歳末の辞 清新な気持ちで新年を

平成29年12月18日付 2面

 平成二十九年も残すところあとわづかとなり、本紙は今号で年内付発行の最終号となる。
 歳末にあたりこの一年を振り返れば、まづ我々の最大の関心事として挙げられるのは、昨年八月八日の「象徴としてのお務めについての天皇陛下のおことば」と、それに先立つNHKニュースの報道に端を発する天皇陛下の譲位についてである。今年六月十六日には「天皇の退位等に関する皇室典範特例法」が公布され、さらに十二月一日の皇室会議における議を経て、特例法の施行日、すなはち天皇陛下が三十一年四月三十日限りで「退位」されることを定める政令が閣議決定された。
 これまでのおよそ一年半の間、その期日や改元、儀式・行事等についてさまざまな事柄が報道されるなか、本紙では連載「皇室の制度と歴史」や論攷を掲載し、「時の流れ研究会」でも数度に亙り見解等を発表してゐる。また神社本庁では「『天皇の退位等に関する皇室典範特例法』に関する神社本庁の基本的姿勢」を、神道政治連盟では「『天皇の退位等に関する皇室典範特例法』に関する神道政治連盟会長談話」をそれぞれ公表してきた。いよいよ日時が決定した今、これまでの御代替り(皇位継承)の前提としての崩御とは異なる譲位(退位)と践祚(即位)の儀式・行事について、また元号の問題や本紙前号でも触れた御大典、さらには今上陛下の御即位三十年もしくは「御在位」三十年の奉祝なども含め、何が最も重要であり、斯界として具体的にいかなる姿勢で臨むべきなのか、改めて確認し合ふことが必要といへるだらう。


 一方、伊勢の神宮においては六月十九日、神宮祭主・池田厚子様が退任され、今上陛下の第一皇女子・黒田清子様が後任として御就任。さらに七月三日には神宮大宮司の鷹司尚武氏が退任し、新たに小松揮世久氏が就任した。神宮を本宗と仰ぐ神社本庁では、本宗奉賛活動強化推進委員会において昨年に引き続き議論を重ね、さらに本宗奉賛活動の柱の一つとされる神宮大麻・暦の頒布に関して神宮大麻都市頒布向上計画(第二期)を策定。そのいづれにおいても奉賛・奉仕に際しての関係者の意識や動機付けが課題とされてをり、腰を据ゑた地道な対策の検討がぜひとも必要といへよう。
 また、この本宗奉賛活動強化推進委員会と対をなす形で設置された過疎地域神社活性化推進委員会では、過疎地域神社活性化推進施策を策定。来年からはいよいよ新施策に基づく具体的な活動が開始されることとなる。過疎化をはじめ神社をめぐる環境の変化が大きな課題となるなか、「諸社の振興なくして神社界全体の発展はあり得ない」といふ先人の言葉を、今こそ関係者一人一人が?みしめながら行動しなければなるまい。


 さらに、日本国憲法施行七十周年にあたった今年、五月三日の憲法記念日に際して安倍晋三自由民主党総裁は自衛隊の憲法明記と改正憲法の三年後の施行を目指す旨を表明。衆院選での改憲勢力の躍進もあり、さらなる国民運動の展開に向けた積極的な活動が期待されるが、改憲にあたっての国民投票をも見据ゑれば、なにより説得力ある丁寧な議論に基づく広範な合意形成が必要だらう。
 今年一月に自国優先主義を掲げて当選した米国ドナルド・トランプ大統領の動向をはじめ、核実験やミサイル発射を続ける北朝鮮、覇権主義に進む中国などの状況も考慮しつつ、わが国のあり方を示す憲法の内容について、神社関係者として如何に考へるべきなのか、さらなる議論を深めていきたい。


 年の瀬も押し迫るなか、都内神社における凄惨な事件が神社関係者をはじめ広く世間を驚かせた。この一年は、評議員会でも話題に挙がった百合丘職舎の売却を含め、斯界内部の事柄が新聞・週刊誌等により広く報じられるやうなこともあった。しかしながら、さうした中にあっても天壌無窮の神勅を確信し、日々ひたすら祭祀の厳修に努める大多数の神職がゐることを忘れてはなるまい。
 来たる平成三十年は明治維新百五十年の節目の年となる。現在の皇室や国家、さらには神宮・神社のあり方を決定づけた維新以降の近代の歴史を振り返り、また明治の先人たちの精神を偲びながら、清新な気持ちで新玉の年を迎へたいものである。
平成二十九年十二月十八・二十五日

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