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加藤隆久著『神と人との出会い―わが心の自叙伝―』 斯界きっての学者神主 心の軌跡と重い課題も

平成30年02月12日付 6面

 兵庫・生田神社名誉宮司の加藤隆久氏が「当り歳」、すなはち七回目の年男、八十四歳になるのを記念して本書を出版された。氏は人も知る斯界きっての学者神主である。学者神主といっても、氏の場合はひたすら神明奉仕と研究に明け暮れるだけ、といった内向的な人生を送ってきたわけではない。今に至るまで、地元神戸を拠点に日本や地域の歴史・文化を広く国内外に発信するエネルギッシュな諸活動を展開し、神道・日本文化の語り部として縦横の活躍をされてゐる人である。
 また、硬い専門的研究だけでなく、これまでにも軽妙にして含蓄のあるエッセイも多数発表してをられる。そんな営為を八十四歳になるまでずっと続けてきた加藤隆久といふ学者神主を育んだ環境や要因とはどういったものなのだらう。それを自ら語ったのが本書であり、その根っ子には「神と人たる自分との出会ひ」がある。

さういへば、氏が三十年以上も前に出したエッセイ集『花えびら』の副題も「神と人との出会い」であり、短い紹介文を本紙に書いたことを憶ひ出す。やはり、ずっと一貫して「神と人との出会い」を念頭に、仏教などの他宗教・他文化を見続けてきたのだ。本書は、そんな一神主の心の軌跡を綴った気楽に読めるが、読む人によっては、実は重たい課題を垣間見せる書物でもある。

〈本体1800円、エピック刊。ブックス鎮守の杜取扱書籍〉
(國學院大學教授・阪本是丸)

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