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論説 「見えない」神社への洞察も 神社のあり方を考へる

平成30年03月26日付 2面

 先月八日、「過疎地域神社活性化推進委員会」の第七回会合が開催され、各神社庁における推進委員会の設置状況や指定地域及び中心となる神社などの検討資料をもとに、種々の意見交換がおこなはれた(本紙二月十九日付)。四月以降には神社本庁が直接支援施策を展開する複数の「特区」の選定が予定されてをり、さらに事業が推進されるところとなってゐる。各神社庁の推進委員会は昨年七月から十月までにかけて三十五府県での集中的な設置を見てをり、ロードマップに沿った斯界の本格的な取組みが始動するものとして、指定地域以外でも関心度の高い内容となってこよう。


 施策展開が図られる対象地域の神社は、いはば「見えてゐる」神社といふことになる。一方で、活動実態の「見えない」、いはゆる「不活動」神社の存在も懸念されてゐる。この問題に対しては、二月十九日に「不活動神社対策特別推進事業」の合同連絡会が開かれ、第一期指定神社庁の担当者が事業結果を報告するとともに、第二期指定神社庁における今後の計画などについて意見を交はした(本紙三月五日付)。
 周知の通り、平成八年に施行された「宗教法人法の一部を改正する法律」による新制度運用以降、休眠状態の「宗教法人」としての「神社」については、神社本庁・神社庁・各神社において慎重かつ早急な措置が求められてゐる。さうした課題は、地域と関はりの深い寺院でも同様に抱へてをり、所轄官庁の観点からは、活動再開が見込まれない場合には合併、任意解散、解散命令の方策が示されるが、神社においてはそれぞれの歴史や伝統、祭祀の形態などに鑑みて安易な手法はとり難い。
 ただ一方で、現実問題として手を拱いてゐるわけにはいかず、法制度に従って適正な措置が求められてゐる。法人の代表役員に就く神職として、係る方面での認識と対処方法を熟知し理解を深めておくことが必要とならう。


 ところで、「見えない」神社に関して留意したい事柄がある。それは、法人ではないが神社や小さな祠などとして祀られてゐる神々の問題である。折々の神事・祭典や年に一度の祭りにでも神職が招聘される場合はまだ「見える」状況といへるが、地域独自で祭典が執りおこなはれ、神職がまったく関与してゐないこともあらう。そのやうな「見えない」神社が如何ほどあるのか不明だが、さうした神社にどこまで関心を寄せることができるだらうか。
 戦前期の神社行政では、『神社明細帳』に登載されなかった神社は「明細帳脱漏神社」とされ、一定の条件・基準が整ってゐる場合には「公認神社」として神社の創立ないし他神社へ合併するといふ手続きがなされた。また無格社の整理問題なども長らくの懸案事項であり、「村社の条件を満たさないものの氏神様と崇敬される神社」の制度的受け皿がなかったとされてゐる(河村忠伸『近現代神道の法制的研究』)。
 今日の地域神社の状況を考へる時、その活性化を図るにしろ、不活動神社に対処する上でも、戦前期からの神社制度や、かうした神社、たとひ祠であってもそれを奉斎してきた地域の状況などを視野に入れた深い洞察が必要であらう。
 確かに「見える」神社だけでも手一杯な上に、「見えない」神社にまで手が回らないといふ状況も否定できないが、神々とともに暮らしを営んできた地域のあり方を無視してしまっては、神社信仰の全体基盤をさらに弱めることに繋がらないだらうか。対策を即答することはできないが、少なくとも社や祠が存在するといふ情報だけでも集約して共有データとして留め置くことは斯界全体の課題として検討されて良い。


 地域神社の活性化、不活動法人のあり方に深く関はってゐるのは「人」である。三月初旬には「地方創生―消滅可能性集落と神社の爾今を考へる―」を統一テーマとする神道青年全国協議会の中央研修会が長崎で開催され、各地から四百人の若手神職が集まった。将来予測が示す人口減少と消滅可能性集落の現実について、他人事ではなく、それぞれが今、行動しなければならないといふ現実に向き合ふ機会となったやうだ。若手神職が多様な関係性の構築を積極的に捉へ、地域でリーダーシップを発揮できる支援が斯界に求められようし、それが今後の人材養成の内実にも関はってこよう。

平成三十年三月二十六日

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