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論説 憲法記念日 自衛隊明記の改憲促進を

平成30年05月14日付 2面

 安倍晋三首相が自由民主党総裁として、憲法九条に自衛隊を明記する改憲案を提示し、東京オリンピックが開催される平成三十二年を新しい憲法が施行される年にしたいと述べたのは、昨年五月三日の憲法フォーラムにおいてであった。それにより国民議論の活潑化と国会での改憲議論を促進させる願ひと狙ひがそこにはこめられてゐた。
 今年も五月三日の憲法記念日に、神社本庁も参画してゐる「二十一世紀の日本と憲法」有識者懇談会と「美しい日本の憲法をつくる国民の会」が第二十回公開憲法フォーラムを都内で開催し、このほか同様の会合が全国百五十四の会場で実施された。東京会場では国民投票に向けた諸活動や、早期の国民投票実施を求める各界からの熱意のこもった提言がおこなはれた。「今こそ憲法改正の国会発議を」との声明文が採択され、登壇して挨拶した自民党・公明党・日本維新の会の各代表に手交して早期の国会発議を強く要望した。


 自民党は昨年の安倍総裁の提言をもとに、党の憲法改正推進本部において約二十回の議論を重ね、三月二十五日の党大会で四項目の改憲素案を発表した。自衛隊の明記、緊急事態対応、参院の合区解消、教育の充実の四項目の素案をたたき台にして、自民党は各党各派に呼びかけ、衆参の憲法審査会で活潑な議論をおこなって「憲法改正原案」を策定し、国会の発議に持ちこむ方針だった。
 ところがここにきて、改憲の早期実現がひじょうに危ぶまれる情勢になってきた。野党各党が安倍首相への不信を募らせ、行政府の一連の事務処理疑惑をめぐり審議拒否などをして国会が空転し、憲法審査会がまったく機能してゐないからだ。野党は安倍政権下での改憲には反対と公言し、会合にも議論にも参加しようとしない。国民代表の国会議員として任務放棄に等しく、安倍首相を「立憲主義違反」などと口にする資格などないといふべきだらう。


 自民党が提示したこの四項目の改憲案は、緊迫化した安全保障環境や大規模自然災害の発生、過疎化による地方と大都市の人口の偏在への対応や経済的な事情に拘らず誰でも高い教育を受けられる環境整備の必要性など、わが国を取り巻く現状を踏まへたいたって常識的で妥当なもので、敢へて反対する理は何もないはずのものだ。それでも野党は、とくに安倍首相が提示した九条を存置した上で自衛隊を明記する案にも、強く反撥して抵抗してゐる。
 しかしこれとて、九条二項を削除して「国防軍を保持する」といふ、元々の自民党の改憲案を諦め、加憲論の公明党にも、九条改悪反対論の野党にも、受け入れ可能な現実的な妥協案として首相が提案したものだ。その決断に至ったのも、自衛隊違憲論争に何とか終止符を打ちたいといふ強い願ひからである。それによって今の自衛隊の活動がとくに変はるわけではないのだ。
 憲法学者のおよそ七割がいまだに自衛隊は憲法違反の存在と解してゐる現状で、「違憲かもしれないけれども、何かあれば、命を張って守ってくれといふのは、余りにも無責任だ」と訴へる最高指揮監督者たる安倍首相の発言と立場を、野党の議員も、また一人一人の国民も、よくよく慮ってみるべきではないか。国民として何の努力もせず、国の安全を他国に依存したままの無責任な状態をこれ以上放置することは許されまい。


 自衛隊を憲法に明記する効果は大きい。現在の自衛隊は、憲法より下位の自衛隊法と防衛省設置法といふ二つの法律によるのみで、日本国憲法には大事な国の防衛に関する規定がまったく存在してゐないのである。もちろん内閣は合憲解釈をとってゐるが、国会では共産党が九条に反する違憲の立場だ。最終的な違憲立法審査権を持つ最高裁判所は、「高度に政治的な憲法問題」は統治行為として、正面からの自衛隊の合憲判断は避けてゐるのだ。
 それゆゑ、憲法に明記されたら、立法・行政・司法のすべてにおいて、明確に自衛隊の合憲が確定し、一部の学者を除いて、違憲論争は終はりを告げる。教育の面でも、中学校や高校の教科書から違憲の言辞が消える。そして何より、危険を顧みず、身をもって祖国の防衛の任に当たってゐる自衛官の、不遇だったこれまでの地位の向上が図られ、士気と誇りを高めることになる。それだけに、改憲は何としても実現させねばならないのである。
平成三十年五月十四日

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