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【新刊紹介】伊達聖伸著『ライシテから読む現代フランス―政治と宗教のいま』 ライシテを切り口として 諸国家比較にも視野広げ

平成30年07月02日付 6面

 宗教的中立・世俗・政教分離等を内包する理念と制度とを指す、フランス語の単語・ライシテ(laicite)。日本語では置き換への難しい概念である。こんにちフランスは、憲法第一条に「ライック」(laique ライシテの形容詞型)な共和国と規定される。日本でも現代フランスに関する論説・論攷ならば、公の場や教育からの宗教色排除、とくに二〇〇四年にムスリム女性のヴェール着用が公共の場で禁止された際の論争、近年のテロ事件にも関はる多文化社会の動揺と政教分離の緊張関係等の説明に、この語が散見される。だがそれらも、基本的にはフランス国家や社会の個別問題としての扱ひである。

 末尾で著者は、「現代の日本において、この国の歩みを振り返り将来像を描き出すことに関わるキーワードとして、日本語に定着しているとは言えない『ライシテ』の語を挙げる者はよもやいないだろう。では、その代わりとなる言葉は何だろうか」(二二九頁)と述べる。著者のいふ、ライシテなる「モノサシ」で、「国家神道」や「日本型政教関係」等の諸概念を整理し、新しい言葉を得ることができるかどうか。著者とは少々異なる立ち位置からも、試みてみる価値はありさうだ。
〈本体840円、岩波書店刊。ブックス鎮守の杜取扱書籍〉
(國學院大學教授・菅浩二)
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