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論説 女子神職の増加 現状を見つめ課題の検討を

平成30年07月09日付 2面

 本号発行日の七月九日には、全国女子神職協議会の設立三十周年記念大会が都内で開催され、関係者参集のもと記念の式典や講演会、さらには祝賀会も執りおこなはれる。
 平成元年の設立から三十年。資質向上のための各種研修会の開催や女性ならではの視点に立った教化活動の実践をはじめ、各地の女子神職会さらには女子神職一人一人の斯界におけるこれまでの貢献に敬意を表するとともに、今後のさらなる活躍に期待をしたい。



 女子神職の任用は、終戦直後における神職の不足を背景に、祭祀の継承と神社の護持運営のために始められた。昭和二十年代末に三百人弱だったその数は、全国女子神職協議会が設立された平成元年には千六百人となり、さらに今では三千四百人にまで増加してゐる。この間、本務宮司数が一万二千人から一万人へと減少するなかでも女子神職の宮司数は一貫して増加傾向にあり、現在では七百人を超える女子神職が宮司として日々神明に奉仕してゐるのである。
 かうした女子神職数や女性宮司数の推移について、宮司数の減少にともなふ兼務社の増加や、昨今の過疎化や少子高齢化の急激な進行による神職の後継者不足などと合はせて考へる時、社家における男性後継者の途絶や減少といふ課題を、女子神職が担ってゐるといふやうな内情の一端も垣間見えてくるのではなからうか。個別の事例によって状況はさまざまで、さうしたことは何も女子神職に限ったことではなく、男性も含めたすべての神職にいへることなのかも知れないが、後継者不足のなかで社家としての使命に一身を捧げるやうなその真摯な姿には改めて頭が下がるのである。
 現在、女子神職には終戦直後と同様に祭祀の継承や神社の護持運営の担ひ手としての重要な役割が期待されてゐる。ただ一方で、各神職養成機関においては女子の奉職先に苦慮してゐるとの話もかねて仄聞する。女子神職数の変化などから見えてくる斯界の現状、その内実を改めて確認し、女子神職を含めた神社界全体の課題として今後のありやうを検討していくやうなことも必要なのではなからうか。



 もとより神社において女性が果たしてきた役割はこれまでも大きく、とくに累代社家の家族によって奉仕が続けられてゐるやうな地方の小規模神社などでは、神職資格の有無に拘らず、神職夫人等の女性の存在が神社の護持運営にとって欠かせないものとなってゐるやうな事例も少なくない。また「男女共同参画」や昨今の「女性活躍推進」などのやうに、女性の社会進出を促進する傾向は社会全体の大きな流れとして存在し、それが斯界にとっても無縁でないことは明らかであらう。
 ただ「女性活躍推進」と銘打った企業等における女性管理職の登用などに対しては、「単なる数合はせ」といふやうな批判が付き纏ひ、その反面、女性の雇用状況については、未だ「人出不足の補充の地位に甘んじてゐる」との見解もあるやうに聞く。一方で世界に目を向ければ、女性聖職者を認めない宗教・宗派があり、わが国においても、歴史的に女人禁制の場や神事なども存在するのである。かねてから大相撲における女人禁制が話題となってきたが、先だっての人命にも関はりかねない例外的な事案は措くとしても、さうした伝統、さらには各神社における故実などは尊重されなければならないだらう。
 いづれにしても、今日的な「男女平等」や「女性活躍推進」の流れのなかでも、あまり極端に男女の性差さへも否定するやうな議論は避けるべきであることだけは附言しておきたい。



 平成八年の神社本庁設立五十周年を機に組織された「神社基本問題研究会」では、諮問事項の一つとして「女子神職の問題」を検討。同十年に提出されたその報告書においては、「女子神職増加の中にあつて、積極的に奉仕できる環境を今後とも整へてゆくべきである」との結論が導き出されてゐたのである。
 報告書の提出から二十年を経た今、これまでの環境整備の状況や、その間の時代と斯界の状況の変容等をも確認しつつ、女子神職の現状と今後のあり方について、斯界全体が関はる重要な検討課題として改めて見つめ直していきたい。

平成三十年七月九日

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