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論説 異例の自然災害 本旨を保ち安全性の確保を

平成30年08月06日付 2面

 西日本での記録的豪雨によって数多くの人々が被災し、また家屋などに甚大な被害が発生してゐる。犠牲者の方々の御霊安かれと念じるとともに、復興に向けた尽力を誓ふものである。
 既報のやうに、当該地方に鎮座する神社にも多くの被害があった。これまでの自然災害においては、例へば地震による建造物・石造物の倒壊などはよく聞かれたが、台風などの風水害の際には、強風による倒木などのほか、比較的大きな被害が生じることはないやうにも感じられてきた。それは、神社の鎮座地が地域のなかでも水害などに遭ひにくいところが選ばれ、結果として「水に浸かる」「土砂崩れに遭ふ」といったことを免れてきたからとも推察されてゐた。
 しかし今回の災害は、我々が漫然と理解してゐた状況を超え、多くの神社が土石流等の被害に遭ふ結果となってゐる。要因としては、森林の荒廃をはじめとするいはゆる治山治水のずさんさなどを指摘するものもあるが、それ以上に、「これまで経験したことがない豪雨」といった言葉に象徴されるやうな気候の変動もあるのであらう。



 豪雨のみならず猛暑も、今年は例年に比べて異常の観がする。摂氏三十五度以上を記録する猛暑日が、まるで普通の日のやうにさへ感じられ、四十度以上の観測も報告されるなど「命に関はる暑さ」などといはれるなか、熱中症患者が数多く出てしまった。これに伴ひ屋外での行事中止といふ報道も数多くあり、祭礼行事の見合はせの報も聞かれた。今後、神社関係者がどのやうに行動していくのかが問はれることともならう。
 報道内容を見てゐると、熱中症に関するもののうちいくつかは、状況の理解不足や、これまでの経験を過信してゐるやうななかでの結果でもあるやうだ。多くの行事は暑さへの対策を図った上で実施してゐるのだが、これまでの経験が役に立たぬやうな状況に至ったのが今年の猛暑であり、それゆゑに慎重を期して行事の中止を決めた事例も見られたのであらう。今年の気象状況が、これまで経験したことがないものであれば、それに対して、ただ伝統に基づき行事をおこなふのではなく、状況に相応しい実施方法や行事の見直しが求められるのは自明の理である。



 夏休みには、境内に子供たちを集めてのラヂオ体操や「緑陰教室」といった行事がおこなはれる。境内の木々の下で周辺よりは涼しく、また安全な環境を利用しての活動であるが、今回のやうな「異常気象」により戸外での行事を心配するあまり、開催が困難になることも懸念される。
 また夏季行事のうちで最も人的移動のある「盆行事」についても同じやうなことが考へられよう。故郷への帰省では先祖供養のための墓参りをおこなふが、各地ではこの季節に祭礼行事等も多くおこなはれてゐる。さうした行事は、暑い夏の行事として続けられてきたため、暑さを避けるための智恵も含まれてゐるはずである。さうした先人の智恵を改めて見直し、さらに昨今の気象状況なども十分に勘案した上で、行事の本旨を維持しつつ参加者の安全にもより配慮するなど、運営面での工夫が必要になってくるのではなからうか。



 神社は地域の中心として祭祀・祭礼を担ふ施設であるが、それとともに地域共同体の構成員が集ふ場である。地域において人々が集まるのに相応しいと思はれる場に存するがゆゑに、また安全確保のための場とも考へられてゐる。正月の参拝に始まり季節ごとの行事を通じて人々が集ってゐることは、当然安全な場所として理解されてゐるからであり、非常時に際しては、ある種の避難所とも認識されるのである。
 しかし今年発生した自然災害は経験や予想を上回り、従来の通念を否定しかねない事態になってゐるのかもしれない。神社関係者としては今一度、神社の立地条件などの安全面を確認するとともに、これまで以上に万一への備へを怠らないやうにせねばならないときではないか。
 そして、さうした活動は神社関係者のみではなく広く地域社会の協力をもっておこなふべきであり、いはゆる「政教分離」などの枠を超え、公的機関とのより密接な連携も期待したい。異常といへる災害に際しての復興とともに、新たな課題として神社人を含めた宗教界共通の課題ともいへよう。

平成三十年八月六日

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