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論説 地域活性化に向け 自発的活動を輝かす組織運営

平成30年08月27日付 2面

 記録的な暑さが続く一方、不意の集中豪雨で尊い命が失はれるなど、今夏の異常気象に対しては遣り場のない気持ちが鬱積する。目を海外に転じても、大雨や旱魃、森林火災など、災害発生の報を聞かない日はない。「神祇令」の祈年祭について、公的註釈書である「義解」は、「歳(とし)の灾(わざはひ)」が作らず「時令順度」、すなはち時節が秩序だって運行することが祈られるとするが、「異常」や「記録的」との謂だけでは捨て置けない日々を過ごす現況において、一層の自覚が必要だらう。被災された方々に改めてお見舞ひを申し上げる。
 世代を重ねて住み慣れた土地や新たな生活を始めた場所で、生活再建が困難な状況に追ひ込まれた方々に、我々はいかに寄り添ふことができるだらうか。旧くからの土地、新しい住宅地、あるいはこれから住まうといふ地域にしろ、「住み慣れる」といふ状況とともに、自己の生活がより快適であるやうに「住み熟す」といふ主体的な生き方があることも見逃せない。これは暮らし方のデザインであり、そこに現はれる文化的・社会的意味や精神性の理解を通じて、地域に「慣れる」「熟す」といふ生活実態を捉へることができよう。



 さて、神社本庁の重要施策として策定された過疎地域神社活性化推進施策について、本庁と神社庁による重点支援の対象となる「特区」として岡山・愛媛・長崎の三地域が指定された(本紙八月六日付号)。各種団体との連携による祭典・神事の活性化、氏子総代会の強化とネットワーク化、神社の連携による地域振興と交流人口増加など、地域特性や現状を見直し、いま働きかけをおこなふことが効果的であるとして立案されたそれぞれの取組みは、神社界にとって極めて貴重な情報となる。
 業務管理等の円滑化の手法とされる「PDCAサイクル」によれば、「Plan」(計画)からいよいよ「Do」(実行)へと動き出したところである。今後、「Check」(評価)を経て「Action」(改善)といふ「循環」のなかで活動の継続性が期待される。ただし、施策の成果を因果関係や相関関係から「評価」

するためには、外部の意見を踏まへた客観的な判断指標を早めに準備しておく必要があらう。



 一方、かうした施策とは別に、自発的に地域の活性化を意識して活動を進めてゐる神職グループも各地に存在する。過日、神社本庁学芸奨励金の交付決定がなされたが、採択された申請テーマを見ると、「北海道内に於ける忠魂碑等調査」「地域神社の祭礼行事の継承と神職活動のこれから―三重県下の事例分析から―」「碧海支部草創期の記録翻刻と解題」「明治維新一五〇年記念『事任八幡宮資料集成』の刊行」「愛媛縣神社社庁松山支部内、全百八十六社 立地に関はる調査」が挙がってゐる。今日の学術研究は、机の前にひたすら座しておこなふだけではなく、アクション・リサーチやアクティブ・リサーチと言はれるやうに、実践型、課題解決型の研究タイプとして、フィールドワーク等の手法を取り入れることが多くなってきてゐる。かうした点では、地域密着の立場から研究と実践が進められるのは頼もしいと言へる。
 一般社会では、地域活性化のために産官学(民)の協働が取り進められてゐる。神社界においても、神社本庁・神社庁と神社・神職、そして専門研究との協働といふ観点から、新たな連携のあり方が摸索されてよからうし、それを動かす人材の養成もますます重要度を増していくのではなからうか。



 今日では、国や地方自治体の姿勢を見ても、「民」の主体性に対して「官」は如何に支援できるかといふ立場にあり、従来型の上からの官主導のあり方は受け入れられてゐない。人々の生活とともに地域に根付いてきた神社を、いま一度、見つめる機会が「過疎地域神社活性化推進施策」であらうし、目立たなくても自発的におこなはれてゐる小さな活動を光として輝かす制度や支援のあり方を構築することが、本庁などに期待される役割と言へよう。
 律令神祇祭祀では祈年祭ののち、風雨の順調が祈られる大忌・風神の祭りが斎行され、やがて稔の季を迎へ、新嘗祭で感謝奉賛の誠が捧げられる。「荒き水」が「甘し水」に変成し、 風が吹かないことを願ふとともに、斯界関係者が施策の推移を他人事とせずに見つめていくことを切に望むものである。
平成三十年八月二十七日

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