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論説 意識調査の報告書 現状を把握して突破点を

平成30年09月24日付 2面

 神社本庁では平成二十八年十月に第四回「神社に関する意識調査」を実施した。すでに本紙三三四四号に論説と調査結果が掲載されてゐるが、このたび詳細な『第四回「神社に関する意識調査」報告書』が刊行された。調査は平成八年から十八年まで五年ごとに実施され、さらに十年経った平成二十八年におこなはれてをり、報告書には二十年間の変化もしくは持続が示されてゐる。また調査結果の報告、調査結果の分析と今後の課題(座談会記録)に加へ、三氏による論文が掲載されてゐる。この報告書は、単に現状把握を目指したものでなく、将来の活路を見出すための努力であるといへよう。



 ここでは調査結果の一部について言及するにとどめ、全容は先述の既報を見ていただくか、報告書を読んでいただきたい。結果は、斯界の厳しい状況を浮かび上がらせるものが多かった。
 氏神の認知率は一貫して減少し、「知っている」は五九・五%にとどまった。また、知ってゐても「お参りしない」と回答した人と、「知らない」との割合の合計が半数を超えてゐる。家庭祭祀で重要な役割を持つ神棚の保有率に関しては、過去最低となった。平成八年に五割を超えてゐた保有率は、二十年間で十ポイント下がって四一・二%に。二十一大都市で二九・二%、東京ではつひに一九・〇%と二割を切るまでに減少した。神宮の認知はこれまでで最も高かった(九八・三%)が、神宮大麻を受けてゐる人の割合は過去最低で一三・七%にとどまった。二十一大都市では八・八%、東京区部ではわづか一・三%である。四一・二%といふ神棚保有率に比べ、氏神神札は二一・六%、神宮大麻は一三・七%の奉斎率となってゐる。
 神札を受ける方法にも二十年間の間に明確な傾向が見て取れる。つまり、地域による頒布の陰りと個人的な志向の昂まりといへよう。「地域の世話人を通して」が四割ほどに低下したのに対し、「神社へお参りして」と「伊勢神宮へお参りして」は一貫して増加傾向を示してゐる。



 掲載された三つの論文は、それぞれ視点の異なるもので興味深い内容が指摘されてゐる。國學院大學教授の石井研士氏は、氏神信仰の二十年の変化から依然として氏神離れが進行してゐる事実を指摘してゐるが、同時に、氏神を変容させた力が一方的に神社界に「衰頽」を強ひたわけではなく、多様な関係性が出現したと述べてゐる。
 黒﨑浩行國大教授は、超高齢化社会の到来がどのやうな形で神社界に現れてゐるかを問題とし、高齢化の進行によって神仏や祖先に対する崇敬心の篤い人々が増加する傾向を指摘するとともに、神社・神職が超高齢化社会における孤独死をはじめとする不安にどのやうに向き合ふことができるかとの問ひを投げかけてゐる。
 板井正斉皇學館大学准教授は、幸福感と神社との関はりを考察。神宮大麻を受けてゐることや神棚のあることが健康を大切にする意識に繫がってゐる可能性があることを指摘し、家族や健康を大切にするやうな教化プログラムの採用が有効となる可能性に言及してゐる。



 座談会では調査項目全般に亙って意見が交換されたが、もっとも関心が集中したのは、牟禮仁深志神社禰宜が「教化活動の中で実践に結び付けるものとしては、神棚が一番典型的な事例」といふやうに、神棚をめぐる問題であった。神棚、神宮大麻、氏神、そして近年ブームと化した朱印との関係が具体的な事例とともに検討されてゐる。いづれも多様な見解が示されてをり、今後の教化活動の展開のためにもぜひ参考にしていただきたい部分である。
 平成二十八年に刊行された『「神社・神職に関する実態調査」報告書』も同じであるが、これらの調査はもとより社会科学的な調査ではあるが、より重要なのは斯界が将来の施策のために利用することである。今回の意識調査においても、本庁関係者が氏神の認知、神棚の保有率、神宮大麻の奉斎率が連動して下がってゐる点を捉へて、「セット」で下がる条件があるのなら、連動して上がっていく可能性もあると述べたのは刺戟的だった。現状を正確に把握することで、状況を好転させるための突破点を見出すことはできるかもしれない。悲観したり諦めたりすることなく、しなやかで柔軟な対応力が求められてゐる。
平成三十年九月二十四日

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