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論説 頒布始祭に際し 津々浦々の神社隆昌に向けて

平成30年10月01日付 2面

 前号掲載の通り、九月十七日に伊勢の神宮で神宮大麻暦頒布始祭が斎行された。祭典後には表彰式並秋季推進会議が開催され、神社庁・頒布奉仕者の表彰ののち、神宮司庁からの報告、頒布活動の事例紹介、神社本庁の取組みについての説明などがおこなはれた。
 神宮大宮司から神社本庁統理に授けられた神宮大麻・暦は、神社庁・支部・神社を経て、さらに神職・総代など頒布奉仕者の手によって年末までに全国の各戸に頒布されることとなる。神宮大麻・暦の奉製、そして頒布実務に携はってゐる大勢の関係者の尽力に敬意を表するとともに、一戸でも多くの家庭において神宮大麻が奉斎されることを切に願ふものである。



 今回の推進会議においては、神社本庁が平成二十六年度から新たな施策として始めた「三カ年継続神宮大麻都市頒布向上計画」の第二期初年度を終へ、その成果と課題・提言などを纏めた活動報告書が配付された。各神社庁からの報告を掲載するだけでなく、効果的だった施策や重要な提言などが冒頭に抽出・整理されてをり、今後の活動に向けて大いに参考にならう。
 現状を見れば、報告書のなかの「山間部では過疎化により増体が見込めず、都市部では氏子意識の稀薄化と神職の意識の低下が見られる」といふ意見が象徴するやうに、都市部においては人口流動等に基づく氏子意識の稀薄化、地方では過疎化や少子高齢化の進行と、それにともなふ神職・総代の後継者不足など、多様な課題を抱へてゐる。報告書からは、さうした状況のなかでまづは問題意識を共有し、かねて課題とされる「氏子区域の実態把握」と「頒布奉仕者の意識向上」に向けて、地道な努力と検討が重ねられてゐる様子が窺へる。
 三カ年の施策実施期間の二年目を迎へるにあたり、推進会議における事例報告や各地からの活動報告書なども参考にしつつ、より有効な施策展開が図られることを期待したい。



 課題である「実態把握」といふことに関しては前号論説でも触れたやうに、このほど『第四回「神社に関する意識調査」報告書』が刊行された。報告書に収載された調査に関する座談会記録では、「神宮の認知度の高さと神宮大麻を受ける行動が結びついてゐない」ことが指摘された。また、これまで大都市圏における頒布率の低さは注目されてきたが、「町村部」においてもこの二十年間で神宮大麻を受けてゐる割合が四一・〇%から一二・九%へと激減してゐることにも触れられてをり、あくまで統計上の数値ではあるものの、これからの活動展開にあたり一つの指針ともならう。
 一方の「意識向上」については、同じく前号の河村忠伸氏による論攷「神宮大麻頒布と神職」にもあるやうに、明治五年に明治天皇の思召しによって始められた神宮大麻の全国頒布は、昭和二年には先人たちの念願が叶って道府県神職団体に嘱託され、戦後も神社本庁からの具申に基づき各地の神社を通じての頒布が続けられてゐる。明治天皇の大御心を体した公的な大御璽であるといふ歴史的な経緯を持つ神宮大麻の頒布に携はる意義について、再確認することが大切といへよう。



 今回の推進会議で閉会にあたり挨拶した亀田幸弘神宮少宮司は、来年の御代替りや再来年の東京オリンピック・パラリンピック開催などに触れつつ、大きな時代の転換点を迎へてゐることに言及した上で、平成七年以来二十三年間に亙り据ゑ置いてゐる神宮大麻初穂料の改定を考へてゐると発言。今後、神社本庁当局と相談し、斯界からの意見も聞きながら検討を進めていきたいとの考へを示した。
 神社本庁では一昨年来、「本宗奉賛活動強化推進委員会」を設置して神宮大麻の頒布を含めた本宗奉賛活動のあり方について検討を重ねてきた。今回の初穂料改定に関する発言は、より多面的な角度から、さらに議論を深めていくためのきっかけともならう。
 神宮大麻・暦の増頒布に向けて、氏子区域の実態把握に努めつつ、神宮大麻頒布の歴史的経緯や意義を再確認して崇高な理想を共有するとともに、さうした頒布活動によって大御稜威があまねくいき渡り、ひいては全国津々浦々の神社がさらに隆昌していくことが実感できるやう、今後のあり方を考へていかねばなるまい。

平成三十年十月一日

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