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論説 三大行幸啓 修理固成の奉仕を誇りに

平成30年11月05日付 2面

 今号掲載の通り、天皇・皇后両陛下には十月二十八日、高知県で開催された明治百五十年記念・全国豊かな海づくり大会に御臨席遊ばされた。
 全国豊かな海づくり大会への行幸啓は、春の全国植樹祭、秋の国民体育大会とともに「三大行幸啓」とも称されてゐる。今年、すでに両陛下には六月に福島での全国植樹祭の記念式典に、また九月には福井での国民体育大会の総合開会式にそれぞれ臨御遊ばされてをり、今回の高知での全国豊かな海づくり大会を以て、今年も三大行幸啓を無事に終へられたこととなる。来春には御譲位が予定されてゐる今、平成の御代を通して各地への三大行幸啓をお続けになられた大御心のありがたさを改めて噛み締めたい。



 陛下には御即位後、この三大行幸啓を含め全国各地を訪れられてをり、昨年で全国四十七都道府県を二巡遊ばされてゐる。
 かうした行幸啓については、一昨年八月に発表された「象徴としてのお務めについての天皇陛下のおことば」のなかでも、「皇太子の時代も含め、これまで私が皇后と共に行って来たほぼ全国に及ぶ旅は、国内のどこにおいても、その地域を愛し、その共同体を地道に支える市井の人々のあることを私に認識させ、私がこの認識をもって、天皇として大切な、国民を思い、国民のために祈るという務めを、人々への深い信頼と敬愛をもってなし得たことは、幸せなことでした」と述べられてゐる。両陛下にとって各地への行幸啓がどれほど重要で、また意義深いものであったのかが拝察される「おことば」ともいへよう。
 地域社会の精神的な核である神社の護持に努める我々もまた、「共同体を地道に支える市井の人々」の一人であるやうに努め、さらにはそのことを誇りとし、国平らかに民安かれと日々祈られる陛下の大御手振りに倣ひながら、それぞれの神社で国家・国民の平安を祈り続けていかねばなるまい。



 行幸啓をお迎へ申し上げてきた各地では、各神社庁や関係団体が友好団体らと協力のもと奉迎委員会などを組織し、各所での国旗小旗の配布や行在所での提灯奉迎活動を実施するなどして両陛下をお迎へできる感激を広く共有してきた。その意味で行幸啓は、我々国民にとって両陛下のお姿を間近に拝し、皇室のありがたさを改めて実感する機会でもある。今後とも万世一系の祭り主たる天皇を戴くことの尊さに思ひを致し、皇室敬慕の念のさらなる発揚に努めるべく、行幸啓における奉迎活動はもとより、さまざまな機会を捉へて積極的な活動展開に努めたい。
 一方、三大行幸啓をはじめ各地への行幸啓に際して両陛下には、たびたび当地の神社に御参拝遊ばされてゐる。また神社に伝へられてきた地元の民俗芸能等が、両陛下の御前で披露されるやうな機会もあった。そしてなにより両陛下には、行幸啓にあたってそれぞれ当地の旧官国幣社と旧指定護国神社に幣饌料をお供へされてをり、さうした全国神社に寄せられる思召しは我々神社関係者にとって恐懼の極みといへる。



 森を守り育てることの大切さを啓発する国土緑化運動の中心的行事としての全国植樹祭、国民の健康増進や地方文化の発展に寄与するとともに国民生活を明るく豊かにすることを目的とする国民体育大会、そして水産資源の保護・管理と海や河川の環境保全との大切さを訴へる全国豊かな海づくり大会――幾多の災害など、平穏ならざることがあるなかで国安かれ民安かれと祈られ続ける大御心。神代に遡るわが国の歴史を振り返れば、高天原の天つ神が伊邪那岐命・伊邪那美命に「この漂へる国をつくり固め成せ」と国土の修理固成を命じられ、御歴代がそれを引き継いでこられた。さうしたことに鑑みれば、行幸啓もまた一つの国土の修理固成といへるのではなからうか。
 三大行幸啓の一つである全国豊かな海づくり大会にあたり、「敬神生活の綱領」において「世のため人のために奉仕し、神のみこともちとして世をつくり固め成すこと」との一節を掲げ、また「共同体を地道に支える市井の人々」の一人であるべき神社関係者として、今、何が最も重要なのかを改めて考へたい。その上で御即位三十年を迎へられる陛下に感謝の誠を捧げ、この佳節を国民挙って奉祝すべく、気運醸成に尽力していかねばならない。

平成三十年十一月五日

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