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杜に想ふ 自覚は行動 涼恵

平成30年12月03日付 5面

 年の瀬を迎へる師走に、少しばかり大胆な話かもしれないが、幼い頃から感じてゐた日本についての所感を綴ってみたいと思ふ。
 私はブラジル・サンパウロで生まれた。だから生まれも育ちも日本とは言へない。だからなのか、日本に対する憧れを何処かに抱いてゐる。島国の人が外国に憧れるやうに。
 皆様は世界地図に浮かぶ龍を見つけたことがあるだらうか。子供の頃、地球儀を回すたびに日本列島が龍に見えて仕方がなかった。世界のどこにもほかに生き物の形をした国は見当たらないのに、日本には何か一つの生命体のやうな役割があるやうに感じてゐた。
 歳を重ねるにつれ、その時に抱いた感覚は薄れるどころか深みを増してゐる。世界的な役割が与へられてゐるから、日本列島が四つのプレートが重なる大きな中継地点として世界を繋げて結ぶ役目として位置してゐるやうに感じるのだ。
 最近こんな話を耳にした。世界に存在する神話の内容が各国で似通ってゐる。近隣の東南アジアのみならず西洋にさへ日本神話と近いお話があったりするのだが、一つだけ大きく違ふ点があるといふ。それこそが洪水神話。古代オリエントのシュメール神話、旧約聖書の創世記、古代アステカ文書、古くから綴られる物語の中には、大洪水が起こり、神様からの教へにより方舟で逃げた家族や多種の雌雄つがひの動物は救はれる。さういった神話が日本にもあっても良いものだが、見当たらない。その理由こそ、ノアの方舟が日本だからだと。日本といふ場所が生き残ったものを乗せる方舟のやうな存在なのだと。
 この話の信憑性は脇に置いておき、もしもそんな役目が日本にあるのだとしたら、我々日本人はもっと視野を広く、環境問題や世界情勢にも見識を深め、国民一人一人の意識が変はってゆく必要があるのかもしれない。しかし報道などを見てゐても疑問を感じることが多い。テレビや携帯などで流れてくる情報は「エンタメ」「ゴシップ」で賑はふ印象がある。もっと国際的な日本の役割について考へる機会が増えれば良いのに。
 一方、海外から見る日本人の印象を聞かされると姿勢が正される。スロヴェニアの街で出逢ったおぢいちゃん、台湾で乗せてもらったタクシーの運転手さん――日本人といふだけで、とても好意的に接してくださる。手を合はせて感謝されることもしばしば。何故かと尋ねると、私等が抱く日本人像とは偉大で礼儀正しいもので、自分の先祖も日本人に世話になったのだと話してくれた。
 現代日本人はどうだらう? 先人たちは、日本人としての誇りや役目を意識して生をまったうされてきたのではないだらうか。日本人としての在り方……自覚は行動に現れる。今からでも各々がこの時代とこの国に生を享けた自覚を深めれば、より良い年を迎へられると信じてゐる。
(歌手、兵庫・小野八幡神社権禰宜)

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