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論説 神宮大麻頒布 意義と尊さをいかに伝へるか

平成30年12月03日付 2面

 いよいよ師走を迎へ、今年も残すところあと一カ月ほどとなった。年の瀬が迫る独得の雰囲気のなかで、各家庭に神宮大麻・暦や氏神神札を届ける頒布活動がおこなはれてゐる。過疎化や少子高齢化、都市部での氏子意識の稀薄化等々の厳しい社会環境にあって、各地でそれぞれ地道な取組みが続けられてゐることに思ひを致すとともに、寒さ厳しい折節、今年も頒布奉仕に従事してゐる神職・総代の方々にまづ以て深く敬意を表したい。
 年が改まって迎へる平成三十一年は天皇陛下の御即位三十年にあたり、また御代替りが予定されてゐる。一戸でも多くの家庭が神宮大麻や氏神神札を神棚に奉斎し、清新な気持ちで新年に臨むことを切に願ふものである。



 神宮大麻の頒布は戦後、神社本庁からの申し出によって神宮の委託を受ける形で、全国の神社関係者による頒布が続けられてゐる。戦後復興や高度経済成長期を経て頒布数は次第に増加し、神宮大麻都市団地対策や一千万家庭神宮大麻奉斎運動としての指定県制度など、斯界における頒布促進に向けた活動の成果もあり、平成六年には戦後最高となる九百五十万体を超える頒布実績を残した。
 その後、漸減傾向が続くなかで新たにモデル支部制度に取り組み、平成二十五年の第六十二回神宮式年遷宮を前に一時増体に転じたこともあったが、現在は残念ながら再び減体傾向に歯止めがかからない状態となってゐる。平成二十六年からは、新たに三カ年継続神宮大麻都市頒布向上計画を策定し、その第二期二年目にあたる今年度は「氏子区域の実態調査」と「頒布奉仕者の意識向上」を重要課題として、各地で施策展開が図られてゐる。
 この間、平成十年代には神宮大麻に関する研究会や本宗奉賛に関する研究会が相次いで設置され、神宮大麻や本宗奉賛についての基盤となる研究を積み重ねるとともに、課題や提言が示されてきた。また、これまでの指定県制度やモデル支部制度といった取組みについては、厖大な活動報告が纏められてゐる。これらの活動成果、その積み重ねをいかに継承して活かしていくのかが、まづ以て重要であるといへよう。



 この神宮大麻頒布に参宮促進と遷宮奉賛を加へた取組みは、かねて神宮奉賛活動の三本柱とされてきた。平成二十八年十二月には、次期式年遷宮も見据ゑて、その強力な推進を図るべく「本宗奉賛活動強化推進委員会」が設置され、本宗奉賛部の担当のもと常務理事一人が委員長に、理事四人が副委員長にそれぞれ就任し、これまで二年間に亙り議論を続けてきてゐる。
 もとより本宗奉賛活動の推進は、一朝一夕に効果的な施策が見つかるほど簡単ではないだらう。例へば、かねてからの式年遷宮への注目と、それにともなふ神宮の参拝者増加があり、また朱印を通じて、さらにはいはゆる「パワースポット」として、神社への関心も依然として高い。しかしさうしたことが、斯界において教化活動のバロメーターともいはれてきた神宮大麻の頒布数に直接結び付いてゐないといふ現状がある。
 頒布奉仕者それぞれが明治天皇の思召しに基づく全国頒布といふ崇高な理想を共有する一方で、一般における神宮・神社への関心を、いかに平易な言葉で神宮大麻の奉斎へと導いていけるのかが大きな課題になってゐるといへよう。次期式年遷宮を見据ゑ、また神宮大麻全国頒布百五十年の節目を控へて、本宗奉賛活動強化推進委員会における議論の成果に期待をしたい。



 先日、宮内庁に設置された大礼委員会が、御代替りに係る諸儀式についての概要を示した。このうち「退位の礼関係諸儀式」には、神宮に関はる儀式として、今上陛下の御譲位に先立ち、神宮に勅使を発遣して御譲位とその期日を奉告して幣物を供へられるのに加へ、陛下御親らによる「神宮に親謁の儀」が執りおこなはれることとなってゐる。神宮に対してお寄せ遊ばされる今上陛下の御敬神の念が、改めて拝察されるところである。
 その神宮の神札である神宮大麻が、神職・総代の地道な尽力に支へられながら、各地の氏神神社を通じて全国津々浦々にまで頒布されてゐるのである。さうしたことの意義と尊さをいかに伝へていくべきかを考へつつ、今年の頒布に臨みたい。

平成三十年十二月三日

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