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若井勲夫編著『鹿児島県(大隅国) 和氣神社 ―御鎮座七十年記念―』

平成31年01月28日付 6面

 今年は亥年である。亥は和気清麻呂公の難儀を救った霊獣として著名である。一昨年本書の編著者若井勲夫先生は、清麻呂公景仰の精神史とも申すべき大著『和気清麻呂に見る誠忠のこころ』(ミネルヴァ書房)を刊行されたが、これは先生が長年かけて和気公景仰史に取り組まれてきた思ひの凝縮した形のものとなってゐて、戦後顧みられないやうに見える和気公の事蹟が、なほ一貫してわが国民の心の内奥に存することを証した名著である。

 このたび、若井先生は和気公の流謫の地、大隅の和氣神社の鎮座七十年にあたり、その記念誌である『鹿児島県 和氣神社』を上梓された。本書は大隅といふ一地方における和気公景仰の歴史から説き、その顕彰、公を奉祀する神社の創建、鎮座、また戦後の維持、復興の上にある現在を描いてゐるのだが、これは一地方の歴史、神社史に留まらず、徳川時代以降に澎湃として興った国民精神史の一端に通じるものであると捉へられよう。

 また本書はその時代の境内図を掲げてゐて、その変遷が実は神社の復興をよく示す形となってゐるのである。一地方神社史ではなく何かを語りかけ、考へさせられる一冊である。
〈修繕事業の記念品のため、販売はしてゐない。問合せは和氣神社(電話〇九九五―七七―二八八五、FAX〇九九五―五四―六四一五)まで〉
(都立小岩高等学校主幹教諭・國學院大學兼任講師 中澤伸弘)

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