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論説 御即位三十年と御大典 神祀りの伝統を改めて考へる

平成31年02月11日付 2面

 今号発行日の二月十一日は「国民の祝日に関する法律」により「建国をしのび、国を愛する心を養う」とされてゐる「建国記念の日」。初代・神武天皇が橿原の宮で即位され、建国の理想を高らかに宣明されたことに因むこの日にあたり、神武天皇に始まり百二十五代に及ぶ御歴代を敬仰してきたわが国の悠久の歴史に思ひを致したい。
 とくに今年は今上陛下御即位三十年の節目を迎へ、また御譲位にともなふ御代替りを控へてゐる。「平成」において最後となる「建国記念の日」に際し、神武天皇による建国以来、皇室を戴いてきたわが国の歴史を見つめ直すとともに、改めて御即位三十年と御大典の奉祝・啓発に向けて、いよいよ斯界挙げて取り組んでいくことを誓ひ合ひたい。



 今上陛下の御即位三十年や御大典の奉祝に向けた活動について、神社本庁ではちゃうど一年前の昨年二月に「御代替特別対策本部」を設置。その基本方針として、御即位三十年の佳節を迎へるにあたり、大御心を景仰し、斯界挙って斉しく感謝と奉祝の誠を捧げることと、御代替りにあたり執りおこなはれる一連の諸儀式が、皇位に係る国家的重儀として、極力先例に準じた形で完遂されるやう働きかけることが掲げられてゐる。また、この基本方針に基づく運動方針として、御代替りの意義や関係諸儀式に関する基本的知識の啓発を通じた皇室敬慕の念の涵養、諸儀式に併せた祭儀の斎行や一層の神社奉護への留意を通じた御大典の盛儀の後世への継承などを提示した上で、さらに神社本庁・神社庁・神社それぞれの活動計画が示されてゐる。
 かうしたことを受けて、各地では「御即位三十年奉祝」を冠した神社関係者大会の開催をはじめ、記念講演やパネル展、御大典の奉祝・啓発に向けた研修会や勉強会などさまざまな取組みを実施してゐる。また昨年十一月には「御大典奉祝に向けた教化活動」を主題とする全国教化会議も開催されてゐる。ただ、さうした活動については前回との比較や地域間において温度差が感じられるとの声も聞かれ、さらなる活動推進に向けた意識の共有が課題になってゐるともいへるのではなからうか。



 さうしたなか、神奈川県神社庁では二月十二日、神社における御大典奉祝事業についての実務研修会を予定してゐる。この研修は、皇室の御慶事を神社関係者が挙ってお祝ひ申し上げるとともに、そのやうな取組みを神社のさらなる振興にも繋げていくことなどを意図したものだといふ。当日は御大典奉祝の歴史や現代的な意義をはじめ、神社における今後の具体的な記念事業推進に向けた実務や教化的側面からの実践例などについて、講義や事例報告を通じてそれぞれ研鑽を深めるとのことで、洵に時宜を得た内容といへよう。
 御大典に係る記念事業については、前回の御大典を終へた平成四年二月に『平成の御大典を壽ぐ』と題して「神社本庁活動記録」と「全国奉祝活動記録」の二冊の記録誌が刊行されてをり、かうした記録も大いに参考となるだらう。もちろん本紙でも各地の取組みをより積極的に紹介していくなど、紙面を通じて奉祝の気運醸成に努めていきたい。
 神社本庁・神社庁・神社においてはそれぞれ異なる事情・状況もあるだらうが、前回の事例などを参考にしつつ広く情報を共有しながら、斯界挙げて御即位三十年と御大典の奉祝・啓発に向けた活動展開が図られることを期待したい。



 もとより御大典に関しては、単に奉祝・啓発活動を実施すれば良いといふものでもないだらう。古代から新帝即位に伴ひ続けられてきた大嘗祭は、中世以降に中断を余儀なくされながら江戸時代になって復興され、さらに近代以降の法整備を経て現在まで受け継がれてきた。さうした先人たちの営為を突き詰めて考へるやうなことが、わが国、そして神社・神道の今後を考へる上でも極めて重要なのではなからうか。
 過疎化や少子高齢化など社会環境の変化等により神社の振興が大きな課題となる昨今だからこそ、このたびの御即位三十年と御代替りについて、皇室を戴くわが国の歴史はもとより、神代に遡るその歴史のなかで、皇室そして神社において連綿と受け継がれてきた神祀りの伝統を改めて考へる契機ともしたいものである。

平成三十一年二月十一日

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