文字サイズ 大小

論説 御譲位の期日奉告 大御心に添ひ御安泰を祈り奉る

平成31年03月25日付 2面

 今上陛下の御譲位の日が近づき、関連の諸儀式が始まった。三月十二日には「賢所に退位及びその期日奉告の儀」があり、引き続き皇霊殿と神殿でも同様の祭儀が執りおこなはれた。さらに同日、「神宮神武天皇山陵及び昭和天皇以前四代の天皇山陵に勅使発遣の儀」がおこなはれた。このことは多くのメディアが取り上げ、国民の関心も高くなったのではなからうか。
 三月十五日には「神宮に奉幣の儀」「神武天皇山陵及び昭和天皇以前四代の天皇山陵に奉幣の儀」があり、御譲位とその期日を奉告し、幣物を供へる祭祀が神宮及び神武天皇・昭和天皇・大正天皇・明治天皇・孝明天皇の山陵にて執りおこなはれた。今後、三月二十六日には「神武天皇山陵に親謁の儀」がおこなはれ、御譲位に先立ち、神武天皇山陵に親しく御拝礼される。さらに来月には、神宮や昭和天皇山陵への親謁も予定されてゐる。



 政府はこのほど、インターネットテレビで「天皇皇后両陛下の一年~ご譲位を前にされて~」といふ動画の公開を始めた。天皇陛下の一年は元日午前五時三十分の四方拝に始まり、次いで宮中三殿での歳旦祭に臨まれ、国家安穏と国民の幸福を祈られる。引き続き宮殿で晴れの御膳の儀をおこなはれた後、皇太子・同妃両殿下をはじめ皇族方から新年の祝賀を受けられ、また内閣総理大臣など三権の長、認証官、さらに各国の外交使節団の長及び配偶者からの祝賀もお受けになられる。祝賀の儀にお会ひする内外要人は千四百人に及ぶといふ。
 翌一月二日は新年一般参賀がおこなはれ、今年は十五万四千人余の人々が新春の祝賀に訪れた。一月三日には元始祭を執りおこなはれ、皇位の元始大本を祝福されて、国家国民の繁栄を祈られる。一月四日には奏事始があり、掌典長が天皇陛下に伊勢の神宮と宮中での祭祀が滞りなく執りおこなはれてゐることを奏上。そして、年初め恒例の講書始の儀、歌会始の儀などが雅やかに厳かにおこなはれ、新しい一年が始まってゆく。両陛下には毎年多くの御公務、諸行事、外国御訪問、慰霊や被災地へのお見舞ひなどを、ほとんどお休みなく続けられてゐる御様子が拝される。天皇陛下の日々のお務めにより、わが国のさまざまな事柄が秩序正しく運ばれてゆくさまを実感できる。



 さうしたなか、神社本庁は三月十二日付で「天皇陛下御譲位御安泰祈願祭祝詞例文(案)」を示し、神宮親謁が執りおこなはれる四月十八日より月末までの間に祈願祭を中祭で斎行するやう通知。また新帝御即位にあたり、神社でおこなふ臨時祭の予定も「月刊若木」や本紙に掲載されてゐる。各祭典の趣旨をよく理解し、祭祀厳修に努めたい。
 その御譲位御安泰祈願祭の祝詞例文に「食国天下ノ大御業ヲ恢給ヒ皇大御国ノ大御栄ヲ弥進メニ進メ給ヒシ」とあるやうに、全身全霊で象徴としてのお務めを果たされてこられた今上陛下の大御心に添ひ奉るべく、御代替りの諸祭・諸行事が聊かの綻びもなく粛々と斎行されることを切に願ふものである。全国神社の社頭から、神々が国造りされ、皇祖・天照大御神の神勅のまにまに発展を重ねてきたわが国の悠久の歴史に思ひを致しながら、氏子崇敬者一同で御安泰を祈りたい。



 このたびの御譲位は、第百十九代・光格天皇以来、およそ二百年ぶりのこと。その光格天皇が、上皇の後櫻町院に宛てられた御消息が残ってゐる。幼くして御即位された光格天皇の御後見をされていらしたのである。そこには、「仰之通、何分自身を後にし、天下万民を先とし、仁恵・誠信の心朝夕昼夜に不忘却時は、神も仏も御加護を垂給事、誠に鏡に掛て影を見るがごとくにて候」と記されてゐる。光格天皇は、さまざまな朝儀を復興されたことでも知られてゐるが、常に「民やすかれ」と祈られる御日常が目に浮かんでくる。
 皇室のありやうは今も昔も変化ない。今上陛下には、昭和天皇の戦前と戦後を繋ぐ厳しい時代の後、祭祀伝統を厳守され、祈りの大切さを国民にお示し遊ばされた。宮中祭祀を通じて常に国家国民の安泰を祈られてゐることが、多くの国民にも知られるやうになってきてゐる。
 この日本のかたちを支へるのは全国の神々である。神職は氏子崇敬者と共に神社の祭祀を厳修し、国の繁栄に寄与しなければならない。

平成三十一年三月二十五日

オピニオン 一覧

>>> カテゴリー記事一覧