文字サイズ 大小

論説 新年度を迎へて 斯界を支へる人材の育成を

平成31年04月01日付 2面

 季節はめぐり、今年も桜前線が列島を北上するなかで平成三十一年度の新年度を迎へることとなりさうだ。企業や学校などでは順次入社式や入学式がおこなはれ、それぞれ清々しく晴れやかな気持ちのなかで新たな一年が始まることだらう。
 斯界においても、國學院大學や皇學館大学をはじめ各地の神職養成機関で卒業式がおこなはれ、学び舎を巣立った学生たちが全国各地の奉職先で神明奉仕を始める一方、新入生を迎へての入学式が挙行される。神明奉仕や学業の場において、新たな生活を始めた人々の前途を祝し、心からの声援を贈りたい。

 文部科学省と厚生労働省によれば、平成三十年度の大学卒業予定者の就職内定率(二月一日現在)は九一・九%で、比較可能な平成十一年度の調査以降で過去最高になったといふ。就職戦線においては、深刻な人手不足を背景に学生優位の「売り手市場」が続いてゐるといはれるなか、さうした状況を反映した数値ともいへさうだ。
 斯界における奉職については、本紙では例年、各神職養成機関への取材を通じてその状況を報じてゐる。養成機関の担当者からは以前より、女子学生の奉職先に苦慮してゐるとの実情などが語られてきた。また学生の奉職希望先が首都圏や都市部の神社に集中し、各地からの求人に必ずしもすべて応へられないとの現状が聞かれ、学生全体に占める首都圏の一般家庭出身者の割合が増加してゐることの影響なども挙げられてゐる。さらに昨今は、都市部の神社であっても求人数に対する応募者数の減少に悩んでゐるとの話さへ仄聞する。
 斯界に限らず近年の課題の一つとされる短期離職については、就職にあたっての理想と就職後の現実との差など、いはゆる「ミスマッチ」が一因ともいはれるが、いづれにしても今後の斯界を支へる人材である若者たちが順調に神明奉仕の道を歩んでくれることを切に願ふものである。

 この四月一日からは、いはゆる「働き方改革関連法」が順次施行されていく。厚労省によれば、その要点は「時間外労働の上限規制」「年次有給休暇の確実な取得」「正社員と非正規社員の間の不合理な待遇差の禁止」の三点。少子高齢化に伴ふ生産年齢人口の減少に対応するためにも、職場環境の改善などの「魅力ある職場づくり」によって「人材の確保」を図り、「業績の向上」、さらに「利益増」に繋げることを目指すものだといふ。
 もとより神社における「神明奉仕」については、単純に「利益増」を追求する一般企業と同列に論じるわけにはいかない。ただ、「魅力ある職場づくり」による「人材確保」が重要であることは企業も神社も変はりはないだらう。先に触れたやうに短期離職が課題となるなか、それぞれが働きがひを感じつつ、十分に力を発揮できるやうな職場環境づくりが大切であるといへよう。
 一方で、そもそも職員を雇用できるやうな神社ばかりではなく、氏子総代などの協力を得ながら宮司とその家族が奉仕に努めてゐたり、公務員や教員、農業など他業種を兼務しつつ、その休日を奉仕に充ててゐたりするやうな事例も少なくない。さうした神職の存在は、神明奉仕が「働き方改革」で論じられるやうな「労働」とは一線を画すものであることの証であるともいへよう。
 後継者養成や小規模神社の振興など神職・神社をめぐる課題が山積するなか、五年先、十年先の斯界のことを見据ゑ、さうした課題に対処していくためにも、この春、新たに神明奉仕を始めた若者たちが、神職としてのあり方を真摯に考へながら経験を積み、今後の斯界を支へる人材に成長してくれるやう期待したい。

 神社本庁の新年度は七月からとなるが、各神社庁ではこの四月から新体制となるところも少なくないだらう。来月の神社本庁五月定例評議員会は、全国から新たに選出された評議員が参集して開催される。今号発行日の四月一日には元号の事前発表が予定されてをり、評議員会は御代替りを経て新元号のもとでおこなはれることとなる。
 新年度を迎へるにあたり、今上陛下の御即位三十年に改めて感謝の誠を捧げ、さらには間近に控へた新帝御即位への奉祝気運を高めつつ、清新な気持ちで新たなスタートを切りたい。
平成三十一年四月一日

オピニオン 一覧

>>> カテゴリー記事一覧