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杜に想ふ まんが 八代 司

平成31年04月08日付 5面

た字数で書くことは存外難しい。それがキャッチコピーのやうに一言ですべてを表現するものならなほさらである。
 たとひ難儀を重ねて書かれた文章でも、書籍や冊子として世に出されるときは、表紙や見出し、写真なども効果的に用ゐ、読者にいかに伝へるかが大切だ。まづは手にしてもらふことに細心の注意が払はれる。いかに流麗なる美辞麗句を連ねたところで読み手に思ひが伝はらなければ、まさにただの紙切れ。手に取ってもらへさへしなかったら、資源のムダ以外の何物でもないとの持論を再確認しつつこの駄文を書いてゐる。
 さて、次の御代の元号がわが国の古典である『万葉集』から「令和」とされることが発表された。いよいよ御代替りの諸儀式が始まり、御即位・改元の日を迎へれば、政府はもとより、神社界が中心ともなったさまざまな奉祝の諸行事が広く展開されることと拝察する。私ごときが申すまでもないことではあるが、この慶事を機運として捉へて思考、実践することこそがこれからの神社界、ひいては「日本」の未来のためと愚考してゐる。
 些か大仰めいたが、先頃、その昔、仕事で携はってゐた絵本『まんが古事記』シリーズを取り寄せて読み返してみた。いささか宣伝めくが、喜怒哀楽の神々の姿は懐かしいタッチの絵で、「てんそんこうりん」には「斎庭の稲穂」や「三種の神器」が描かれ、巻末には「大嘗祭」についても記されてゐる。子供たちのみならず、読み聞かせをする家族にとっても極めて有用であらうことがあらためて確認できた。
 その昔、漫画好きと自称した某内閣総理大臣がゐたが、当時、世間一般からはいささか冷笑された感があった。しかしながら、いまや漫画やアニメは世界に誇る日本文化の一つとして認識されてゐる。海外からの来訪者、すなはち近頃多用される「インバウンド」が増加し、彼らが世界的に人気のあるアニメに登場する場所を「聖地」として巡ることによる経済効果は高く、地方の観光行政も積極的な取組みをおこなってゐる。
 『古事記』や『日本書紀』にその地名が記される有名所だけではなく、そもそもが「くにうみ」神話に由来し、かつ山川草木に八百万の神々が鎮まる日本の国土はすべてがまさに聖地である。各地に伝承される神話や民話なども数多く、まだまだ魅力が内包されてゐるが、それらの伝承が危機的状況にあることも見逃せない。私自身も、歴史や偉人伝、諸分野の漫画で解説された本を子供の頃に読んだものが、案外と記憶に残ってゐることを実感してゐる。この慶祝の時に、日本と郷土の歴史をあらためて学ぶとともに、いかにして次代に繋げるかを自分自身も考へる契機としたい。
(まちづくりアドヴァイザー)

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