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論説 御即位三十年 「おことば」を羅針盤として

平成31年04月22日付 2面

 四月十日、超党派の天皇陛下御即位三十年奉祝国会議員連盟と神社本庁も参画する天皇陛下御即位三十年奉祝委員会とでは、「天皇陛下御即位三十年奉祝感謝の集い」を東京・国立劇場で開催した。集ひには約千八百人が参集し、各界の代表者から祝辞が述べられたほか、奉祝演奏や祝賀コンサートもおこなはれた。
 天皇・皇后両陛下御結婚満六十年にあたったこの日、各地の神社ではその奉祝祭が斎行されてをり、盛大かつ厳粛に御即位三十年と御結婚満六十年の節目をお祝ひ申し上げた。かうした節目にあたり、平成の大御代を国民とともに歩んでこられた両陛下のお姿を胸に刻みつつ、御皇室のますますの弥栄を祈るものである。



 御即位以来、これまで三十年間の大御代を振り返れば、被災地へのお見舞ひや戦歿者慰霊を含め、各地への行幸啓が印象深く記憶されてゐる。両陛下には、御即位後十五年で全国四十七都道府県に行幸啓されてをり、さらに一昨年までにすべての都道府県を二回以上お訪ねになられたといふ。
 その行幸啓が、「天皇の務めとして、何よりもまづ国民の安寧と幸せを祈ることを大切に考へて」こられた陛下にとって極めて重要であったことは、「私が皇后と共に行って来たほぼ全国に及ぶ旅は、国内のどこにおいても、その地域を愛し、その共同体を地道に支へる市井の人々のあることを私に認識させ、私がこの認識をもって、天皇として大切な、国民を思ひ、国民のために祈るといふ務めを、人々への深い信頼と敬愛をもってなし得たことは、幸せなことでした」との「おことば」に明らかである。行幸啓を通じ、「人々の傍らに立ち、その声に耳を傾け、思ひに寄り添ふ」ことに努めてこられたといふ優渥なる大御心を改めて敬仰したい。



 一方、地方への行幸啓の折には旧官国幣社と旧指定護国神社に幣饌料を賜り、今号掲載のやうに各地の神社に御参拝遊ばされる機会も少なくなかった。神宮への御敬神はいふまでもなく、勅祭社への恒例の勅使差遣をはじめ大東亜戦争終戦の周年における旧指定護国神社五十二社への幣帛料の御奉納なども洵にありがたいことであった。かうした神宮・神社に寄せられる御敬神、そしてなにより宮中三殿において敬神崇祖の大御心を示される大御手振りに倣ひ、今後とも神明奉仕に努めたい。
 また行幸啓にあたり斯界では、地元の友好団体などと協力のもと奉送迎活動を実施してきたが、提灯奉迎などに際しての両陛下の御答礼や、お労ひの「おことば」を賜ったことなどを思ひ返してみても、そのありがたさがしみじみと胸に迫ってくる。この機会に、なほ一層の皇室敬慕の念の喚起・醸成に尽力していくことを誓ふものである。



 『史記』の「内平かに外成る」と『書経』の「地平かに天成る」を出典とした平成の時代は、阪神・淡路大震災や東日本大震災をはじめとする自然災害が相次いだほか、バブル崩壊以降の長引く不況などもあり、必ずしも平坦な道程ばかりではなかったともいへる。だが国民はその道程を、常に「国民のために祈」られる陛下の御姿を拝して共に歩んできた。戦災復興に始まり、一直線に経済成長を目指した戦後の昭和を経て迎へた平成の三十年。新たな局面や想定外の事態に時に翻弄されながらも、それぞれが今後のあるべき姿を摸索しつつ、懸命に生きた時代だったともいへるのではなからうか。さうした時代において、常に国民とともにあらうと尽くされた今上陛下を戴くことができたのは、洵に幸せなことであった。
 陛下には、政府主催の御在位三十年記念式典で平成の三十年間を振り返られ、「世界は気候変動の周期に入り、我が国も多くの自然災害に襲はれ、また高齢化、少子化による人口構造の変化から、過去に経験のない多くの社会現象にも直面しました。島国として比較的恵まれた形で独自の文化を育ててきた我が国も、今、グローバル化する世界の中で、更に外に向かって開かれ、その中で叡智を持って自らの立場を確立し、誠意を持って他国との関係を構築していくことが求められてゐるのではないかと思ひます」との「おことば」を述べられた。御代替りを控へた今、なによりこれまでの陛下の「おことば」を羅針盤として、今後の新たな時代を歩んでいきたい。

平成三十一年四月二十二日

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