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論説 一般参賀を終へて 国民は新帝への誓ひを新たに

令和元年05月13日付 2面

 このたび践祚遊ばされ、祖宗の神器を厳粛に継承された天皇陛下には、令和元年五月一日に三権の長など国民代表参列のもと朝見の儀を終へられ、続いて五月四日には、皇居において一般参賀の多くの国民から御即位の奉祝をお受けになられた。当日はあたたかい陽光に木々の新緑が映える絶好の晴天に恵まれ、各地から馳せ参じた老若男女に外国人なども交へ、皇居二重橋附近から東京駅まで長蛇の列をなし、参賀者は十四万人余にのぼったといふ。
 皇后陛下とともに宮殿ベランダに立たれた天皇陛下には、参賀の人々にお応へになり、六回に亙って毎回お喜びと感謝のお気持ちを表明され、「わが国が諸外国と手を携へて世界の平和を求めつつ、一層の発展を遂げることを心から願ってをります」とのおことばを述べられた。当初一般参賀は、十月二十二日の即位礼の後におこなはれる予定だったが、それが早められて五月の連休中に実現したのは、皇室と国民にとって洵に慶ぶべきことだった。



 令和の新元号とともに、若者などにも皇室への関心と新たな時代への期待が昂まり、さらに諸外国からの注目も集まってゐる。戦後現憲法下で三代目となられる陛下が、初めて戦争体験のない天皇として御即位され、英国御留学などで外国の自立した自由な雰囲気のなかでの生活を御体験された天皇として、米英の著名な二大学に学ばれた皇后陛下とともに関心を集めてゐるのだ。
 陛下には御即位前のお誕生日の記者会見で、新しい時代に臨む皇室の重要な公務として、上皇・上皇后両陛下が摸索されつつ取り組まれた公務を道標に、被災地や各地を訪問して人々と喜びや悲しみをともにし、国民と接する機会を広く持つやうに心掛けるとともに、国際親善とそれに伴ふ交流活動をおこなって日本と各国との友好親善に努めることも重要と述べられてゐる。長年研究に携はられ、御自身のライフワークともいふべき「水」問題についても、これまでに得られた知見を防災や減災の重要性を考へられるうへで大切に活かされたいとも話されてゐる。陛下には、皇太子時代に皇族として初めて国連の「水と衛生に関する諮問委員会」の名誉総裁に推戴され、これまで「世界水フォーラム」などで数多くの基調講演をおこなってこられた。我々は日本の天皇としてもそれらの御活動に御期待を申し上げるものであるが、そこには困難な問題もある。



 日本国憲法は、第一条で天皇を日本国と日本国民統合の「象徴」とする一方、第四条では、天皇のおこなふべき行為を内閣の助言と承認による「国事に関する行為のみ」に厳しく限定し、「国政に関する権能を有しない」と制約してゐるのである。それゆゑ、陛下が重要と考へてをられる諸外国との交流活動や国連での御講演なども実は国事行為以外のものであり、厳密に解すれば何らかの意味で国政にも関係することになりかねない。
 かうした問題を解決すべく憲法改正を目指す自由民主党は、第一条で天皇を「元首」と位置付けるとともに第四条も改正し、現在、天皇のいはゆる「象徴としての地位に基づく公的行為」として解釈上容認されてゐるものを、元首の地位に伴ふ公人の行為にしようとしてゐるわけである。しかしながら、目下自民党が実現しようとしてゐる四項目の改憲案のなかには、この天皇条項が入ってゐない。それどころか今国会においては、五月三日の憲法記念日を迎へても、未だ一度も衆参両院の憲法審査会が開催されてゐないといふ嘆かはしい有様なのである。



 天皇陛下には、御即位後の朝見の儀において「上皇陛下のこれまでの歩みに深く思ひを致し、また、歴代の天皇のなさりやうを心にとどめ、自己の研鑽に励むとともに、常に国民を思ひ、国民に寄り添ひながら、憲法にのっとり、日本国及び日本国民統合の象徴としての責務を果たす」ことを誓はれた。洵に謙虚で心強いおことばであり、ありがたい限りである。国民挙って心から感謝申し上げなければならない。
 陛下には、自らの自由意思で御即位されたわけではない。ただ一切の私意を捨て去られて無にされ、全身全霊で「象徴としての責務」を果たされることを誓はれたのである。我々もまた、陛下にお応へすべく誓ひを新たにし、わが国の発展を目指して全力を尽くしていかなければならないのである。

令和元年五月十三日

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