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岡田莊司著『大嘗祭と古代の祭祀』 新・旧の大嘗祭論を収録 神道の実践性を展望する

令和元年05月20日付 6面

 本書は、古代・中世神道史の代表的な研究者であり、本年三月末に國學院大學神道文化学部教授を停年退職された岡田莊司氏の最新の著作である。

 本書は第一部と第二部に分かれる。第一部は、平成二年に刊行された『大嘗の祭り』(学生社)がほぼそのまま収録されてをり、第二部は、近年発表の論説と新稿によって構成されてゐる。まづこのやうな内容編成に注目したい。大嘗祭が天皇の践祚に伴って斎行されるのは周知の通りであるが、本書第一部は平成の大嘗祭を目前にしての論説であったのに対し、第二部を含む本書は、このたびの御代替りを念頭に置いて編述された。つまり、三十年前の大嘗祭論を踏まへ、この間の研究の推移を考慮しつつ、著者自身の「自分史の学問成果」(あとがき)を、一部・二部として構成されたものである。そこには三十年余に亙る著者の学問の蓄積が凝縮されてゐる。

 氏が本書の「あとがき」で「善に伐らず、輩に争ふべからず」といふ『徒然草』の一節を引くのも、まづ自らの生き方こそ問はれるべきといふ、神道の実践性を確認されたものである。平穏な生活を願ひ、協同して豊かな社会を実現するのは、人としての誠実さを拠りどころとする。その点で、学問探求は人文学の良心の復活と重なり合はなくてはならない。
 本書に見られる穏やかな筆致の背後には、このやうな岡田氏によるわれわれへの厳しい問ひかけが含まれてゐるやうに感じられる。
〈本体2800円、吉川弘文館刊。ブックス鎮守の杜取扱書籍〉
(岐阜大学教育学部元教授・早川万年)
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