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編集委員が語る 真福寺善本叢刊〈第三期〉神道篇の刊行 第一回配本『第二巻 麗気記』 茨城大学人文社会科学部教授 伊藤 聡

令和元年06月10日付 5面

 名古屋市中区大須にある北野山宝生院真福寺(通称「大須観音」)は、中世の書写にかかる貴重な資料・典籍を現在に伝へる寺院である。これらの一角を構成するのが神道聖教である。

 その重要性は江戸時代から知られてをり、伊勢神宮の神官たちが、神宮で失はれた伊勢神道書を書写するために訪れ、また『続群書類従』神祇部の底本には複数の真福寺本が採用されてゐる。
 近代における真福寺の資料調査は、昭和初期の黒板勝美を団長とする東京帝国大学の悉皆調査のあと、一九八〇年代より今日まで、国文学研究資料館及び名古屋大学(阿部泰郎教授)のグループによって継続的な調査がおこなはれた。九〇年代以降、その成果に基づき、臨川書店より『真福寺善本叢刊』の刊行がはじまり、第一期(全十二巻)、第二期(全十二巻〈十三冊〉)が出た(平成十年~二十三年)。

 これによって真福寺神道書の相当部分は公になったのだが、まだ多くの注目すべき典籍が残ってゐた。今回の『真福寺善本叢刊』第三期・神道篇(全四巻)は、既刊分には未だ収められてゐなかった重要な神道典籍を公刊すべく企画されたものである。
 最初に刊行されたのが、第二巻「麗気記」である。本巻では真福寺蔵『麗気記』のほか、関連する『剣図』『宝剣図注』『法剣図聞書』『麗気血脈』『麗気制作抄』の影印と翻刻(一部)を収めた。『麗気記』は伊勢神宮を密教的に解釈した神道書で、本巻十四と図巻四から成る。

 伝本は全国に多く残され、複数の影印・翻刻が出版されてゐるが、真福寺本は南北朝期書写の最古写本のひとつであり、かつ全巻完備してゐる点において、ひときは重要な伝本である。
〈本体24000円、臨川書店刊。ブックス鎮守の杜取扱書籍〉
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