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杜に想ふ 初めての大祓 八代 司

令和元年07月08日付 5面

 今年の六月三十日は全国的にも梅雨空が広がり、降雨を心配するなか各地の神社では夏越の大祓が執りおこなはれた。半年間を無事に過ごせた神恩に感謝し、罪穢れを祓ひ清め残り半年の無事を祈り、心身の清浄を重んじる日本人ならではの麗しい神事。
 しかしながら、私自身は中学時代より産土神社の宮司さんに弟子入りして一連の年間神事に携はって来たものの、この「夏越の大祓」の実見は地元を離れた学生時代までは皆無であった。その理由は実に簡単で、産土神社や地元の近郷近隣の地域でまったくと言って良いほどおこなはれてゐなかったからにほかならない。
 さて、お蔭さまで神社界との御縁をいただいて長いのだが、とりわけ今年の夏越の大祓は特別な感慨で迎へた。それは近頃、神職家に生まれて他家へと嫁ぎ、今年、神職資格を取得された禰宜さんとお話しする機会を得たことによる。実父である宮司さんの発意を受けて新たに「大祓」を斎行することになったとのことで、その相談に乗らせていただいた。
 聞けば御実家で奉仕する神社では従前は七夕祭がおこなはれてゐたが、近くの商店街で催事として七夕が盛大におこなはれることとなり、人の流れが変はってしまった。そのため、神社に親しみを持って貰ひたいとの想ひから初めて大祓を執りおこなふこととなったのださうだ。
 後継者たる三十代の女性神職の禰宜さんはひじょうに熱心で、神職資格取得のために実習した神社を再訪し、茅の輪の形状や作り方、形代の手配等について微細に学んだ上で、宮総代や地元の区長さん方の協力を得て神事をおこなふこととなった。当初、茅の輪は境内の鳥居に取り付ける予定であったが、折しもの大雨警報によって、急遽、公民館のパーテーションのポールを総代さんが手配、趣味の日曜大工の巧みな技術で拝殿に立てられた。また、形代は実習神社で学んだ方式を参考に、社殿に準備した檜樽に張られた水に宮司さんが一枚一枚浮かべたことも評判が良く、さらには、大祓の代名詞とも言へる和菓子「水無月」もネットを見ながら手作りして振舞ったところ好評で、準備した数では足りなくなったとのこと。
 当初の予想を遙かに超えて五十人を超える参列者があり、拝殿での和やかな直会風景の写真と「総代さんが来年もぜひまたやりたいと言ってくれた」と電話口で嬉しさうに話す禰宜さんの声を聞き、私も嬉しくなった。手作りの案内チラシも効を奏し、初回であったための珍しさと今年の六月三十日が日曜日であったことから家族連れも多かったが、来年以降についてはこれから相談とのこと。
 暑い中、茅萱を一人で手刈りされた宮司さんと禰宜さんの熱意、そして氏子さんの協力で始まった大祓が神事として根付き、ここから広がる教化活動のさらなる展開を大いに期待したい。(まちづくりアドヴァイザー)

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