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論説 社会を明るくする運動 鎮守の杜を心の砦として

令和元年07月08日付 2面

 前号掲載の通り「社会を明るくする運動」(社明運動)の強調月間である七月を迎へた。この活動は、「犯罪の防止と罪を犯した人たちの立ち直りには、一般の理解と協力が不可欠」との認識に基づき、終戦直後に始められた国民運動。今年は、「犯罪や非行のない安全・安心な地域社会を築くための取組を進めよう」「犯罪や非行をした人たちの立ち直りを支えよう」の二点を行動目標としてゐる。
 斯界においても各地の神職が、犯罪を犯した者の更生を指導・支援する保護司や、矯正施設在所者の希望に応じて宗教教誨をおこなふ教誨師を務め、更生・矯正に従事してきた。日々、社頭での神明奉仕に務めつつ、地域社会において、そのやうな活動に尽力することの尊さと意義を共有したい。



 わが国においては近年、刑法犯罪認知件数が減少を続ける一方、再犯者率が年々上昇するなど再犯防止が重要な課題とされてゐる。平成二十四年には犯罪対策閣僚会議で「再犯防止に向けた総合対策」を決定。さらに一昨年には、政府が「再犯防止推進計画」を閣議決定するなど、さまざまな対策が講じられてきた。
 このうち「再犯防止に向けた総合対策」においては、刑務所出所者等が、健全な社会の一員としての責任を果たすことができるやう、適切な生活環境(居場所・帰住先)と一定の生活基盤(出番・就労先)を確保することの重要性を強調。あはせて必要に応じた支援を受けられる環境を作ることで対象者の社会復帰を促進し、孤立化や社会不適応に起因する再犯を防止することを重点施策の一つに掲げてゐる。
 また「再犯防止推進計画」のなかでは、再犯防止等に関する施策実施において、保護司・教誨師を欠くことのできない存在とした上で、その高齢化や減少傾向が進んでゐるほか、地域社会の人間関係が稀薄化するなど、社会環境が変化したことにより従前のやうな活動が難しくなってゐることなども指摘してゐる。
 再犯防止を目指した保護司や教誨師の活動は特殊ではある。しかしながら、地域社会における人間関係の稀薄化や孤立化なども課題とされるなか、地域社会を存立基盤とし、これまで、その紐帯を強化する役割をも担ってきた神社に奉仕する神職として、決して等閑視できない問題だらう。



 先月六日には全国各地の神職保護司で組織する全国神職保護司会の第三十回記念総会が都内で開催された。その冒頭、主催者を代表して挨拶に立った福田勉会長(東郷神社宮司)は、神道信仰に基づき活動する神職保護司の役割の大きさを改めて説明した上で、地域に密着した神社の特性を活かし、「鎮守の杜は非行防止の心の砦」を合言葉に、地域社会に安らぎと活力を与へることの大切さを強調した。一方で、犯罪の凶悪化をはじめ家庭での児童虐待、自殺を招くいぢめの増加などへの憂慮を示し、これらの原因として家庭・地域社会における人間関係の稀薄化などに加へ、和を尊び人を思ひやるといふ伝統的な精神の喪失があることを指摘。犯罪者の心の中に、祖先が大切に育み伝へてきた神々と祖先への感謝の心や自然への畏敬の念があまりにも欠如してゐることに驚かされるとの思ひを語った。
 さうした観点に立てば、昨今の犯罪や地域社会をめぐる状況は、神々の恵みと祖先の恩とに感謝する神道信仰に基づき、歴史的にも地域社会の精神的な核としての役割を果たしてきた神社の存在意義を問ふものともいへるのではなからうか。



 現在、神職のうち約四百三十人が保護司を務めてゐるのをはじめ、教誨師は約百四十人、加へて、地域における社会福祉等を支援する民生委員には約三百四十人が就任してゐる。しかしながら人的資源には限界があり、先にも触れたやうに社会環境をめぐる状況は、その活動をますます困難にしてゐるといへる。
 さうした状況だからこそ、斯界全体としても支援や協力を惜しまず、その地道な活動を理解した上で、より積極的に後押ししていきたい。神職保護司などの更生・矯正活動の支援を通じて、安全・安心で、安らぎと活力のある地域社会を築いていくことが、地域社会を基盤とする神社の隆昌にも必ず繋がっていくと信じるものである。

令和元年七月八日

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