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杜に想ふ 呼び方 八代 司

令和元年08月12日付 5面

 連日、夏の暑さが続き、おほよそ旧暦のお盆までは暑い日が続くものと覚悟してゐるが、秋風が吹く季節が待ち遠しい日々である。
 先日、涼を求めて美術館の企画展へ行って来た。季節ものとして全国から集められた「幽霊画」は、展示ケースのガラス越しではあったが充分な見応へのあるものであった。幽霊画の代名詞的な絵師である円山応挙は香煙の中に浮かぶ様を描き、足元がおぼろな姿が世間の好評を得て、以来、幽霊には足がないとの通説になったとされてゐる。科学文明の発達した現代では幽霊の正体はまさに枯れ尾花の如くであらうが、霊魂観として考へた場合に神社神道の教学的には御霊の顕現した姿として考へるのか、この機会に識者の教へを乞ひたい。
 さて、ちゃうど、お盆、みたままつりの季節。お正月同様、まさに民族大移動のやうな帰省ラッシュは久々ともなる祖父母と孫の笑顔での対面の時。そして本来は祖先の墓に参るための家庭の祭りの時である。家々により祖先を祭る方法はさまざまで、とりわけ代々と歴史ある神職家の方々ではどのやうにされてゐるのかも興味深い。
 数年前、ある県の若手神職の方々が神道青年会の企画として、「神職家の祖先まつり」と題して県内の各神職家での葬祭における作法と祖先祭祀について一斉調査をしたことがあり、その設問作りに関はることがあった。その設問で、祖先をお祭りしてゐる場所について「その呼称」を調査したのだが、本紙読者の神職の方々の場合、一般家庭の仏壇に相当する祖先祭祀の場所をどのやうに呼ばれてゐるであらうか。地方性もあるだらうが、神職家の祖先祭祀の場の呼称は実にさまざま。しかし若手神職の方々は神職資格取得のため養成機関で学んだことにより、教科書に記載された全国的、一般的な例が滲透してゐる。調査は、父祖が代々呼び習はしてきた呼称が確実には継承されてゐないことにささやかな警鐘を鳴らすものでもあった。
 ちゃうど六十年前となる昭和三十四年に発行された「神葬祭」の規準ともなる『改定諸祭式要綱』の「はしがき」には、地方の慣習は由来のあることとして「大いに尊重さるべき」と明記されてゐることをあらためて確認したい。そして神社界では言霊の考へ方か、とりわけ「死」については常には言葉に出すことも遠慮し、まさに忌み嫌ふ向きが多く、親子間でも「わが家のまつり」について話したことがないといった方も多い。件のアンケート調査の実施理由は、まづは親子間の会話作りと各家の祭りの次代への確実な継承のためにも、現状を確認するためであった。
 チェック選択式の回答欄には「おたまや・みたまや・れいしゃ・それいしゃ・れいだん・かみだな・その他」と選択例を列挙した。さて、読者諸氏の家での回答はいかがか、この夏にぜひ御家族でお話しをいただきたい。
(まちづくりアドヴァイザー)

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