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論説 G二〇大阪宣言を受け 海洋汚染と神社人の役割

令和元年08月12日付 2面

 廃棄されたプラスチックごみが大量に海に流出して、世界はいま深刻な海洋汚染問題に直面してゐる。海洋プラスチックごみ対策は、温室効果ガスによる地球温暖化対策に次いで世界全体が協力して取り組まなければならない実践的な地球環境問題となってきた。
 先般、安倍晋三首相が議長となって大阪で開催された二十か国・地域首脳会議(G二〇サミット)でも、海洋ごみ、とくにプラスチックごみ及び破砕化したマイクロプラスチックに対処する措置が主要議題の一つに取り上げられた。その対策をめぐって首脳間で意見が対立するなか、日本が提案した「二〇五〇年までに海洋プラスチックごみによる追加的な汚染をゼロにまで削減することを目指す」といふ、大きな将来目標を掲げた「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」を共有することが採択された。海洋国家である日本は、自身で汚染から自国を守るとともに、日本人の英智と技術でもって率先してこの問題の解決にあたり、世界に貢献していくべきだ。清浄を旨としてゐる神社人としても、とくに高い関心をもって取り組んでいかねばならない。



 海洋に流出してゐるプラスチックごみの量については、国際合意のある統計は現状では存在しないといふが、平成二十七年の時点で約五百万トンから一千三百万トンとの推計がある。また国別の流出量では、人口十四億の中国がほぼ三分の一ほどを占め、インドネシア、フィリピン、ベトナムなど東南アジア諸国でその大半を占める。先進国では米国が多く、日本は年間約二万から六万トンと推計されてゐる。
 途上国のなかには、廃棄物が管理されてをらず、あらゆる生活ごみが川に捨てられて海に流れ出てゐる国が多い。しかも先進国から出たプラスチックごみを、リサイクル用なども含め大量に輸入してきたのである。しかし近年の汚染への関心の昂りから、さすがに中国やマレーシアなどは取締りを強化し、輸入規制に踏み切った。それでわが国も今後は、自国内で廃棄プラスチックの管理と処分を徹底していかざるを得なくなったのである。
 かうした状況下で、政府は国内で官民一体となってさまざまな取組みを推進するとともに、途上国を中心に世界全体の実効的な海洋プラスチックごみ対策を支援するため、「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」の実現に向けた「マリーン・イニシアチブ」を発表。分別・収集といった廃棄物管理の手法や流出防止策、海洋ごみ回収の技術提供や人材育成など、多方面に亙って国際協力を進める方針を表明した。



 プラスチックは可塑性に富み、軽くて耐水・耐油に優れ、電気絶縁性が良いことなどから、工業製品としてあらゆるところに利用されてゐる。日常生活においても、ポリ袋からペットボトル、包装や容器等の雑貨類、さらには家電、自動車、建築資材、農林水産用具等々、広範にその恩恵に与かってゐる。そのためプラスチックごみの海洋流出ゼロを目指すには、まづ、その使用と流通を削減し、分別回収を徹底するとともに、リサイクル率を高め、残余は発電や熱利用するなど極力資源循環を高める手法と技術を開発する発想が大事である。
 すでに経済産業省は海中の微生物によって分解されるプラスチック新素材の開発・導入を考へてをり、民間では小売店などでのポリ袋・包装の廃止や有料化、紙製品やバイオ素材への代替化が進められてゐる。またプラスチック製ストローを紙製に切り替へたり、最近は森林の間伐材を使用した木製ストローが開発されたりするなど、さまざまな取組みが報道されてゐる。



 海洋プラスチックごみによる海の汚染が、漁業や観光のみならず人体や生態系に及ぼす影響の認識や対策などが最初にG二〇で取り上げられたのは、二年前のドイツ・ハンブルクサミットでの首脳宣言だった。日本人は、認識の面ではまだまだ不十分であるが、神社人は、海洋汚染を含めた地球環境の問題に無関心であってはならない。
 まづは神社において、例へば直会などで発生する弁当容器の削減など身近なことから始め、氏子や地域住民にあらゆる実践を呼びかけていく必要があらう。すべての努力は海川山野の幸に繋がっていくからである。禊祓を重視する神道の立場からも、この問題に真剣に取り組むことが大事であらう。

令和元年八月十二日

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