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論説 令和元年の収穫を迎へ 祭典を通じて慶祝の意を

令和元年09月30日付 2面

 天皇陛下には九月十九日、御位に即かれてより初めてのお稲刈りに臨まれた。昭和天皇から上皇陛下、さらには今上陛下へと伝へられる稲作りは、まさに、わが国が豊葦原瑞穂国であることを顕現するものといへる。上皇陛下がお手播きになられ、今上陛下がお手植ゑ遊ばされた稲が収穫の秋を迎へ、陛下がお手づからお刈り取りになる御様子を拝し、そのありがたさを改めて深く実感するものである。
 一方で先日、今秋の大嘗祭に先立ち亀卜によって定められた悠紀地方の栃木県と主基地方の京都府における斎田の発表があり、それぞれ抜穂前一日大祓に続いて抜穂の儀が執りおこなはれ、今後、精米が献納されることとなってゐる。いよいよ御大礼奉祝の気運が満ちてくるなかにあって、我々神社関係者は「即位礼当日神社に於て行ふ祭祀」や「大嘗祭当日神社に於て行ふ祭祀」といった祭祀を通して慶祝の意を表することをはじめ、氏子崇敬者など関係者一体となってさまざまな準備にとりかかってゐる。奉祝の時を目前に控へ、慶事を寿ぎまつることの大切さを共有したい。



 八月三十日、神道青年全国協議会の発案によって「天下大祓」がおこなはれた。古くは大嘗祭に際して五畿七道の祓ひがおこなはれ、大嘗祭にあたっての清浄を期したが、久しくこの制が途絶えてゐるため、とくに青年神職が率先してこの任にあたり、各地でゆかりの場などを選定して斎行された。
 また、このたび悠紀地方と主基地方の斎田では、抜穂前一日大祓ののちに抜穂の儀がおこなはれ、大嘗祭に際しては、大嘗祭前二日御禊の儀と大嘗祭前二日大祓の儀が執りおこなはれる。神社本庁からの通達においても、大嘗祭前二日の臨時大祓の執行が明記されてゐる。このやうに清浄を求めて祓ひが重ねられ、御大礼の諸行事を迎へるのである。
 各地の神社においても清浄を期して祭典を斎行することとなるが、果たしてかうした祭祀を通じた祝意の表明が、どこまでその真意を理解した上で執りおこなはれるのかといふことにも留意しておかねばならないだらう。



 例へば各地の神社には御大礼の奉祝気運醸成に向けて、ポスターなどが掲示されてゐる。そのなかに「神社のお詣りを通して御即位をお祝いしましょう」と記されたものも見られた。これまでは御大礼の期日の告知、その重要性や歴史等の解説が主なものであったが、直接に神社との関はりを示すやうな内容はあまり見受けられなかった。しかし、周知の事実であったやうな事柄が今ではさうではなくなり、より直接的な表現を用ゐて多くの人々に啓発しなければならない状況もあるのではなからうか。
 これは祭祀における「新嘗祭」のあり方にも通じる。新嘗祭は新穀感謝の祭りといふ位置付けで祭祀が執りおこなはれ、陛下が御親祭される宮中での祭典に合はせて執りおこなふといった重要なことは、あまり説明されてこなかった側面もあるのではなからうか。それゆゑに「大嘗祭の年に新嘗祭を斎行しない」といふことへの理解が進まないこともあったといへよう。宮中の新嘗祭に合はせて神社の新嘗祭がおこなはれてをり、今年は大嘗祭が斎行されるため宮中での新嘗祭はおこなはれず、それゆゑ神社においては新嘗祭に代はって「大嘗祭当日神社に於て行ふ祭祀」を斎行するといふ論理的背景を明らかにし、また言挙げしていく必要があらう。



 奉祝の秋を迎へ、我々神社人はまづ清浄を期すために祓ひを厳修して清らかな心身をもって祭祀に奉仕し、祭典を通じて慶祝の意を表することが第一である。そして奉祝行事に臨むにあたっては、その意図するところが日々の奉仕と乖離しないやうに努めねばならない。さうしたことが自らを律するとともに、その考へ方を人々に伝へていく上でも重要なことである。先に述べたやうに、これまで周知の事実だったにも拘らず、現在では理解が十分ではないやうな事柄もあり、必要に応じて積極的に発言・行動していくことも求められる。
 祓ひをおこなひ祭典に奉仕するといふことと、その意図するところを言挙げしていくといふ両面を使ひ分け、奉祝の秋を清く麗しく迎へることを神社関係者に願ふところである。
令和元年九月三十日

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