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論説 憲法改正論議

令和元年10月21日付 2面

審査会の議論を即時開始せよ


 令和の時代を迎へて最初となる臨時国会が、天皇陛下の「おことば」を受けて十月四日に開会された。我々は今国会に、長く中断状態だった憲法審査会を速やかに再開し、真剣な改憲議論をおこなふやう強く要求したい。
 安倍晋三首相は、七月の参院選で改憲論議を焦点の一つに掲げて勝利し、九月には内閣改造と党役員人事をおこなふなかで、ベテランの細田博之元官房長官を二度目の党憲法改正推進本部長に据ゑ、衆院と参院の憲法審査会長も入れ換へて体制を立て直し、布陣を強化した。二階俊博幹事長と岸田文雄政調会長も先頭に立って二人の地元である和歌山と広島をはじめ埼玉や福島などの地方都市において集会や会合をもつとともに、改憲論議を活溌化するために遊説組織の新設も決めた。この際、国会と地方議会の議員らを総動員し、全党を挙げて改憲に取り組む意気込みを国民に示してもらひたい。

 いま国政の上で、憲法の何が問題か。国民一般にはまだ充分な意識付けができてゐない。改憲気運の盛り上がりも不十分だ。このやうな状況のなかで、神道政治連盟は、まづ憲法に対する国民の関心を高め、国民の間で改憲が必要との気運を盛り上げ、また国会における憲法改正の議論を促進し支援するために、全国の主要都市における「公開憲法フォーラム」を企画して実施してきた。
 すでに開催した福岡、大阪、名古屋の三市では、有名講師による自衛隊の献身的な活動の紹介や、一般に向けた分かり易いパネルディスカッションが好評で、毎回関心の昂まりを見せてゐる。四回目は十一月二十六日に北陸・金沢での実施が予定されてをり、引き続き他地区での開催を検討中だ。神社界としては、さらに憲法改正を目指す各都市の友好団体などとも協力し合って、改憲の国民運動を盛り上げていかねばならない。

 衆参両院に憲法審査会が設置されてからすでに十二年にもなるが、活動は目下膠着状態といはざるを得ない。自民党は自衛隊の明記など四項目の改憲案を発表してゐるが、野党は審議に乗ってこない。安倍首相はこのやうな怠慢な野党を時に批判し、参院選の際にも、憲法審査会では一年間に衆院は二時間、参院は三分しか議論してゐないと論難した。ところが野党第一党の立憲民主党の枝野幸男代表は、安倍首相のもとでは審議に応じないと、かたくなに審議拒否の姿勢なのだ。自民党のなかには、首相が前面に出ると挑撥となり、かへってブレーキになるとして、首相の発言を抑へる動きすら見られる。さりとて野党を審査会に引き出す理窟をもってゐるわけでもないのだ。こんな状況でずるずると時間を浪費するのは許されない。与野党の国会議員には、二つの認識の誤りがありはしないか、この際、熟考を求めたい。
 その第一は、憲法改正の「発議権」が国会にある(九十六条)ことから、内閣の「発案権」を認めようとしない誤りである。発議とは、国民投票に附すべき憲法改正案を議決し決定することである。その前の原案を提出する発案権は、国会とともに内閣にもある。従って総理大臣が改憲の必要を主張し、国会に対し発案することは何ら妨げられることはないのである。野党はそれを受け止めて審議に応じて反対するしかなく、審議拒否は議員の職務の放棄に等しい。

 その第二は、国会議員には憲法の尊重擁護の義務(九十九条)がある。それをただ憲法の規定と精神に違反することなくそのまま忠実に守ること、とだけ考へる誤りである。憲法の尊重擁護義務の中には、今一つ大事な義務がある。即ち改正発議の義務(九十六条)があるのを忘れてはならない。それは、時代の趨勢や世界情勢の変化に応じて憲法規定を常に柔軟に見直し、必要に応じて足らざるを補完し、改めるべき所を改正して改良に努め、その改正決定を国民に提示して判断を仰ぐことである。憲法改正の最終の可否は、法律とは異なり、主権者国民の直接投票に委ねられてゐるのだ。国民の良識を信じるなら、何も審議拒否などする理由はまったくないのである。
 安倍首相の自民党総裁としての任期は、令和三年の九月までである。あと二年弱しかない。内閣の首班として、また党の総裁として、何ら臆することなく堂々と憲法改正の先頭に立って強力な指導力を発揮してもらひたい。
令和元年十月二十一日

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