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冬月 律著『過疎地神社の研究 人口減少社会と神社神道』 実証的研究で問題指摘 斯界が学ぶべき取組み

令和2年01月01日付 11面

 「高齢者が増える過疎地域の神社はどうなるんだらう」といふ疑問、「なぜ過疎化が進むと神社神道が困るのか」といふ問ひかけに向き合ってきた著者が本書で提示する内容は、まさに神社界が「経験する今」のことであり「他人事ではない」重要テーマである。
 冬月氏は、國學院大學大学院博士後期課程、同大学研究開発推進センターPD研究員を経て、公益財団法人モラロジー研究所研究センター主任研究員、麗澤大学非常勤講師といふ現職にあり、宗教社会学の視点から地域神社や神社神道を見つめる数少ない新進気鋭の研究者の一人である。実態状況の把握と理解のためにフィールドワークを積み重ね、本書では、その成果が諸データとともに提供されてゐる。
 但し、本書は、過疎地域の神社は今後どのやうにすれば活性化するのか、あるいは漠然と地域の変容と神社・神社神道への影響を論評するものではない。むしろ事実をどのやうに直視する必要があるのかをデータに基づき検証し、また現場から聞こえてくる生の声を、如何に対象化しつつ検討課題としてまとめていくか、そしてそこからどのやうな将来が予測されるのかといふ点を追及した学術書である。手にするには堅苦しさを感じるかもしれないが、内容構成を見るとひじょうに重要な問題が扱はれてゐることがわかる。

 「感覚的な議論」ではなく、実証的な研究を提示する本書が、随所で指摘する問題点や実状分析と理解の方法から学べることは多く、そのことがさらなる議論と研究進展を促す機会となることを期待し紹介を終へたい。
〈本体7500円、北海道大学出版会刊。ブックス鎮守の杜取扱書籍〉
(皇學館大学名誉教授・櫻井治男)
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