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論説 少子化と働き方 「国難」乗り切る斯界の改革は

令和2年02月03日付 2面

 厚生労働省が昨年末に発表した人口動態統計の年間推計によれば、昨年、国内で生まれた日本人の子供の数は八十六万四千人で、明治三十二年の統計開始以来、初めて九十万人を割り込んだ。一昨年の確定数は九十一万八千四百人だったことから、五万四千人の減少となる。一方、昨年の死亡数は百三十七万六千人と推計されてをり、死亡数から出生数を引いた自然増減は五十一万二千人の減少。少子高齢化が予想以上の早さで進んでゐることが、改めて浮き彫りとなった。
 出生数が過去最低を記録したことについて安倍晋三首相は「国難だ」とし、今後の対策を講じるやう一億総活躍相の衛藤晟一氏に指示を出したと報じられてゐる。少子高齢化にともなふ社会構造等の変化は、全国約八万の神社にとっても無縁ではなく、古来の信仰基盤に大きな影響を及ぼすだらう。今後の動向を注視しつつ、その対応・対策を検討していかねばなるまい。

 出生数減少の要因としては、出産適齢期の女性人口の減少に加へ、晩婚化や晩産化・非婚化などが挙げられる。さらに掘り下げていくと、共働き家庭が増加するなかで、家事や育児分担が女性に偏ってゐることを挙げる意見も根強い。報道各社の論調においても、少子化の克服のためには政府による対策だけでなく、働き方の改革をはじめ、新卒に偏重しない幅広い年代からの人材登用を含めた雇用のあり方の再検討など、企業等に積極的な労働環境の改善を求める意見が定着化してゐる。すでに残業時間の削減や有給休暇の取得率向上を目標に掲げ、働きやすい環境整備に着手する企業も出てきてをり、改革を進めた結果、一定の成果を上げた取組みなども紹介されてゐる。
 そのやうななか、現役大臣が第一子誕生にともなふ育児休暇の取得を発表し、女性だけでなく男性も育児休暇を取得しやすい社会への環境変化を促すための格好の事例として、報道各社も挙ってこのニュースを取り上げた。

 本号発行日である二月三日の節分行事が終はると、年末の迎春準備から続いてきた繁忙期の社務が一段落する神社も多い。この時期には年末年始の多忙な奉仕を改めて振り返り、とくに若手神職が今後の奉仕とともに、自らの人生設計に関して不安を覚えるといふやうな声も聞かれる。
 神社における「奉仕」については、あくまで祭神に対する神仕へであり、一般的な「労働」とは必ずしも同列に論じられない側面もあることが指摘されてきた。しかし一方で、一般の企業などがさまざまな「働き方改革」を実践し、被雇用者側もそれぞれ多様な価値観に基づき人生設計を考へ、それに副った環境を求めて職場を選択・変更することが次第に一般化しつつある。さうした今日にあっては、神社界においても人材の育成・確保の観点から、世間一般でいふ「労働条件」や「労務管理」を含めた奉仕のあり方について見つめ直さざるを得ない時期に差し掛かってゐるともいへるのではなからうか。

 本紙では、これまで農林水産業などに代表される第一産業と神社との深い繋がりを折に触れて指摘し、後継者や人材確保にともなふ困難を、わがことのやうに憂慮してきた。第一次産業の従事者が高齢化するなか、若者の新規就業者は極めて少ないといふ現実を目の当たりにしてゐる。その原因の一つが、一般的に見れば過酷とされる労働条件にあることは想像に難くない。さうしたことの打開策の一つとして進められてゐるのが、第一産業の「企業化」であり、具体的なこととしては企業化にともなふ給与や年次休暇の保障、厚生年金や保険の完備などが挙げられる。かうした業態が定着するかどうかはわからず、もちろん神社において「企業化」といふことは考へられないが、地域の中核神社を中心とした相互扶助体制の構築などは、かねて提起されてきた。そのやうな取組みも含め、神社自身が奉仕時間や給与、有給休暇といった奉仕環境を考へていかねばならないだらう。
 安倍首相のいふ「国難」を乗り切るためにも、子育て世代にあたる若手神職の奉仕環境をはじめ、かねて課題とされる後継者養成を含め、次代を担ふ人材の育成と確保に向けた「斯界の働き方改革」について大いに議論すべき秋が来てゐるといへる。
令和二年二月三日

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