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論説 令和初の天長祭を迎へ 「おことば」拝し使命に思ひを

令和2年03月09日付 2面

 二月二十一日、皇居東御苑の大嘗宮跡地において、大嘗宮に用ゐられた資材が古式のままに焼却された。資材の大半は、すでに報道されてゐるやうにバイオマス発電の燃料として再利用されるといふ。焼却されたのは大嘗宮の主要部材の一部で、賢所で忌火を鑽り出し、掌典等によって焚き上げられた。神聖な祭祀に使用された大嘗宮の祭儀斎行後の措置として、古儀を尊ぶ心がかうした所にも生きてゐる。
 そして二月二十八日には、大嘗祭後大嘗宮地鎮祭が執りおこなはれた。昨年七月二十六日、大嘗宮建設前の地鎮祭斎行後に工事が始められ、十一月の大嘗祭の直前に完成・竣功し、無事に大嘗祭が執りおこなはれた。大嘗祭後には大嘗宮が一般公開され、約八十万の人々が参観。十一月二十一日から十二月八日までの短期間にも拘らず多くの人々が訪れ、国民の関心の高さが浮き彫りとなった。その後、大嘗宮は解体され、今回の地鎮祭となったものである。これで昨年五月一日から執りおこなはれてきた即位儀礼は、すべて完了したことになる。改めて、御即位にともなふ諸儀式が恙なく執りおこなはれたことをお祝ひ申し上げたい。

 二月二十三日には令和の御代を迎へて初めてとなる天長祭が斎行され、引き続き祝賀の儀式が執りおこなはれた。しかし、新型コロナウイルス感染症の感染拡大が懸念されるなか、一般参賀が中止になるといふ異例の天皇誕生日となったのは洵に残念であった。
 天皇陛下にはこれに先立つ二月二十一日、御即位後初めての記者会見に臨まれ、約十カ月間の天皇としてのお務めを振り返られて、「一つ一つの公務に真摯に向き合い、心を込めて大切に務めを果たすべく努めてまいりました。天皇の一つ一つの公務の重みと、それらを行うことの大切さを感じております」と述べられた。さらに「上皇陛下のこれまでの歩みに深く思いを致し、また、歴代の天皇のなさりようを心にとどめ、研鑽を積み、常に国民を思い、国民に寄り添いながら、象徴としての責務を果たすべくなお一層努めてまいりたいと思っております」とお述べになられた。即位後朝見の儀にあたり述べられたことについて、重ねて御決意を新たにされたと拝した次第である。

 今上陛下には学習院大学で中世の水運史を学ばれ、英国・オックスフォード大学への御留学に際してはテムズ川の水運史を研究された。それらのことは御著書『水運史から世界の水へ』に纏められてゐる。そして、御関心は水運史にとどまることなく、世界の水問題へと広げられ、世界水フォーラム等で御講演をされ、貴重な御見識を示されてをられる。「水問題は、あたかも水がどこにでも流れていくように、世界の紛争、貧困、環境、農業、エネルギー、教育、ジェンダーなどさまざまな分野に縦横無尽に関わってきます」と水問題の重要性を指摘された。
 このたびの会見のなかでも昨年のわが国における風水害をはじめ、旱魃や砂漠化・水質汚染など地球規模の環境問題にも触れられながら、「『水』を切り口に、豊かさと貧困、防災など、国民生活の安定と発展とともに、世界の様々な課題についても考えを巡らせることができる」と述べられ、今後も御事情の許す範囲で少しづつ、水問題へのお取組みを続けられることを御希望されてゐる。

 御歴代の天皇は、とりわけ学問を重んじられ、和歌の伝統なども大切にされてこられた。現在でも、年頭の講書始の儀や歌会始の儀にそのことが端的に示されてゐる。さらに「禁中は敬神第一」との叡慮である。「国やすかれ、民やすかれ」と神々に祈られることを第一とされてこられたのである。
 前記した「上皇陛下のこれまでの歩みに深く思いを致し、また、歴代の天皇のなさりようを心にとどめ、研鑽を積み、常に国民を思い、国民に寄り添いながら、象徴としての責務を果たすべくなお一層努めてまいりたい」と述べられるお姿に、改めて揺るがぬ皇室の伝統を拝するのである。まことに有難いことである。御代始の一世一代の大嘗祭の諸儀が滞りなく済み、令和の初めての天長祭にあたり天皇陛下の「おことば」を拝し、改めて「伝統を重んじ、祭祀の振興と道義の昂揚を図り、以て大御代の彌栄を祈念し、併せて四海万邦の平安に寄与する」私たち神道人の使命にも思ひを致したい。
令和二年三月九日

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