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論説 神宮大麻暦頒布終了祭 意識向上と家庭祭祀の観点を

令和2年03月16日付 2面

 今号掲載の通り、三月五日に伊勢の神宮で神宮大麻暦頒布終了祭が斎行された。今年は新型コロナウイルス感染症の影響により正副総長と常務理事等のみが参列し、祭典にあはせて開催されてゐる恒例の神宮大麻暦頒布春季推進会議や神宮大麻都市頒布向上計画研修会などは中止となった。
 今年度は平成二十六年度から実施されてゐる「三カ年継続神宮大麻都市頒布向上計画」の第二期最終年度にあたり、その活動成果等を踏まへながら、次年度からは第三期「三カ年継続神宮大麻都市頒布向上計画」が始まることとなる。この第三期の最終年度となる令和四年度は、明治天皇の思召しに基づく神宮大麻全国頒布から百五十年の節目にあたってゐることから、向後三年間の活動はとくに重要な意味を持つ。また初穂料の改定を間近に控へたこの時期、已むを得ないことではあるが会合等の中止は残念であった。
 異例の対応となった今年の神宮大麻暦頒布終了祭にあたり、まづ以て全国各地の頒布奉仕者の並々ならぬ尽力に深く敬意を表するとともに、会合等の中止の影響が最小限となるやう配慮がなされることを望むものである。

 今年度の神宮大麻頒布数は八百四十六万九百三十四体で、前年度比二万九千三百九体の減体となった。平成七年以降は、一時増体に転じた時期もあったが、長く漸減傾向が続いてをり、ピーク時の平成六年と比べると約百万体の減体となってゐる。この間、神宮大麻に関する研究会や本宗奉賛に関する研究会により施策の基盤となる検討がおこなはれ、さらに一千万家庭神宮大麻奉斎運動として指定県制度に続くモデル支部制度が、そしてさらには現在の三カ年継続神宮大麻都市頒布向上計画が取り進められてきた。
 昨今は、過疎化や少子高齢化をはじめ、人口流動にともなふ氏子意識の稀薄化、世帯構成の変化、さらには神職・総代の後継者不足等さまざまな課題が指摘され、神宮大麻の増頒布は決して容易なことではない。これまでのさまざまな取組みや活動実績の積み重ねに基づき、次年度からの施策展開が図られることを期待したい。

 最終年度を終へた第二期の「三カ年継続神宮大麻都市頒布向上計画」においては、「氏子区域の実態調査」と「頒布奉仕者の意識向上」の二点が取り組むべき重要課題とされてきた。このうち、とくに「頒布奉仕者の意識向上」については、一朝一夕に目に見える形で成果が表れるわけではない。加へて、社会環境の変化など斯界だけでは対処できないやうな課題が山積するなか、減体傾向が長期化することで、ややもすれば次第に危機感が稀薄化したり、諦念のやうなものが芽生えたりしつつあるやうなら、さうした意識の変化にも注意が必要となってくるだらう。
 頒布始奉告祭・頒布終了奉告祭の斎行や研修会等を通じた意識喚起、また神職養成のさらなる充実など、一見迂遠と感じられるやうな地道な取組みこそ重要ではなからうか。今後も「頒布奉仕者の意識向上」に向けて、積極的かつ継続的な取組みを求めたい。

 去る二月の神社本庁役員会では、本宗奉賛活動強化推進委員会の継続設置が決定してをり、近く会合が開かれると聞く。同委員会は平成二十八年の設置以降、神宮大麻暦の頒布、参宮促進、遷宮奉賛を三本柱とする本宗奉賛活動の推進などについて審議。昨年六月の設置期限を前に提出された中間報告において継続設置が提案されてゐたものである。今回改めて常務理事一人を委員長、理事若干名を副委員長とし、現役員の任期にあたる令和四年六月までを期限に再設置されることとなった。
 同委員会においては、氏神神社の神札と神宮大麻の奉斎を通じた神棚祭祀をはじめ家庭祭祀の振興の大切さが確認されてゐるが、かねて課題とされてきたやうに、核家族化さらには近年の単身世帯の増加など、家庭のあり方は大きく変はりつつある。もとより家庭は共同体の最小単位であり、その変容は神宮大麻の頒布に限らず、共同体を基盤としてきた神社・神道の今後に深く関はる。先に触れた「頒布奉仕者の意識向上」を図っていく上でも、神宮大麻の頒布について、家庭祭祀のあり方、そして神社・神道の行方などの観点を含めてじっくりと考へていかねばなるまい。

令和二年三月十六日

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