文字サイズ 大小

杜に想ふ 苦しい時こそ 山谷えり子

令和2年05月04日付 5面

 四月七日の緊急事態宣言から一カ月が過ぎようとしてゐる。政治は被害を最小化し、収束に向かはせる責任がある。日々変化する社会にどう役割を果たすか、事業規模で百十七兆円の緊急経済対策の実施状況とさらなる対策について情報収集と議論を重ねてゐる。
 総理が宣言発令後の会見で、コロナ禍を「戦後最大の危機」とし、「みんなで共に力を合はせれば、再び希望を持って前に進んでいくことができる」と言はれた時、私は戦後の復興に日本人が結束して力を尽くした街の姿を思ひ出した。
 物事には悪いことの中に良いことの芽があると感じてゐる。桜、つつじ、藤の花と咲き、新緑の美しさが今年は一段と目にしみる。青空に鯉のぼりの泳ぐ姿を見ながら大人たちの踏ん張り時だと思ふ。自粛疲れ、家庭内暴力やコロナ離婚などといふニュースも聞こえてくるが、かういふ時こそ私たちが作ってきた文明の光と影、生き方、働き方、家族や地域共同体について改めて考へてみるチャンスだとも思ふ。
 小学四年生になった孫の始業式は、今年はオンラインであった。服装を整へてスマホの前に座り、校長先生の愛と責任感に満ちたお話を家族そろって伺へたのは貴重な体験であった。校長先生は「いつでも読書、家でも読書」といふ言葉でお話を締めくくられたので、わが家ではインターネットで伝記の本を買ひ求め、野口英世、ヘレン・ケラー、エジソンと孫は次々と読んで感想を話す日々を過ごしてゐる。
 都市化、効率化、サービス競争の社会の中で、私たちは思ひ通りにいって当たり前と考へる癖を色濃く身につけてしまったが、今はかうしたことも含めて、人生や社会のありやうを哲学しなさい、葛藤を引き受け、複雑性の中でこそ人格や社会が成熟していくことを思ひ起こせと言はれてゐるやうに感じる。亡き父がよく言ってゐた「苦しい時こそヤセ我慢」「上機嫌がマナー」の言葉もなつかしく思ひ出される。
 自民党の憲法改正推進本部では非常事態における人権保障の問題について勉強を深めてゐる。日本人の民度の高さを大切にしつつ、必要かつ合理的な制度の限度についてこれまで国会内で議論の蓄積がなかったことを与野党共に感じてゐる。
 必要な法体系について国民の共感を得られるやう進めていくことは大きな責任の一つである。総理は、緊急事態宣言直前の衆議院議院運営委員会で「緊急時において国民の安全を守るため、国家や国民がどのやうな役割を果たし、国難を乗り越えていくべきか、そのことを憲法にどのやうに位置づけるかについては、極めて重く、大切な課題である」と述べられてゐる。
(参議院議員、神道政治連盟国会議員懇談会副幹事長)

オピニオン 一覧

>>> カテゴリー記事一覧