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大石 眞著 『日本憲法史』 通史的な視点から 憲法を問ひ直す書

令和2年05月04日付 4面

 明治憲法と現行憲法とを切り離して議論しがちな昨今の憲法学の風潮のなか、本書は幕末の開国から種々の政変、議会開設と条約改正、基本法典の調査立案を経て、明治典憲体制が成立するまでの経緯とその崩壊、さらには現行憲法の制定・運用の経緯を一連のものとして論及。加へて解釈論や諸学説にも配慮がなされてゐるところに、大きな特徴がある。

 戦後、歴史的な視点で憲法制定の構想や成立についての細かな経緯を繙いた書には、稲田正次『明治憲法成立史』や、小嶋和司『明治典憲体制の成立』、明治神宮編『大日本帝国憲法制定史』等があるが、いづれも大著で、その点では本書がコンパクトな学術文庫として刊行されたのは、読者の側からすればたいへん有難い。

 本書のはしがきに記された「過去を離れた現在はなく、経験のはたらきによって過去は現在に生きる。問題は、経験のはたらきを曇りのないようにすることにある」といふ一文は、今後の改憲論議を考へる上でもひじょうに大事な視点であるものと思ふ。

 通史的な叙述からわが国の憲法を体系立てて考へ、課題を指摘することがいかに重要であるのかといふことを改めて気づかされた次第である。
〈本体1380円、講談社刊。ブックス鎮守の杜取扱書籍〉(國學院大學神道文化学部准教授.・藤本頼生)
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