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論説 御即位満一年を迎へ 皇位継承の安定化に尽力を

令和2年05月04日付 2面

 天皇陛下には、五月一日に御即位満一年をお迎へ遊ばされた。現在、国内外における新型コロナウイルス感染症の脅威は止まず、目下その感染拡大と国民の困苦を深く御憂慮なされてをられることと拝察申し上げる。
 四月十九日に予定されてゐた「立皇嗣の礼」は、この感染症の影響による安倍晋三首相の緊急事態宣言を受け、十四日の閣議で急遽延期されることとなった。立皇嗣の礼は、秋篠宮殿下が皇位継承順位第一位の皇嗣となられたことを内外に宣明される儀式で、国事行為としておこなはれる。また「皇嗣に壺切御剣親授」など皇室の行事としておこなはれる関連行事等についても、同日宮内庁が延期を発表した。
 大事な諸儀式・行事が延期となるのは洵に残念なことではあるが、国内外の代表が多数参列する皇室と国家の慶事であるがゆゑに、国民が挙って祝意を表することができる相応しい時期に挙行されるやう、我々としても一日も早い感染症の収束を祈念したい。



 立皇嗣の礼が延期されたことに伴ひ、政府がこれまで立皇嗣の礼を終へた後で本格的におこなふと表明してきた「天皇の退位等に関する皇室典範特例法案に対する附帯決議」で示された「安定的な皇位継承を確保するための諸課題、女性宮家の創設等」についての検討も先送りとなった。
 本紙は先週号で、神社新報社が設立した「時の流れ研究会」が四月十九日に発表した「皇位の安定的な継承を確保するための諸課題」についての見解を掲載した。同研究会は、二百余年ぶりの御譲位による皇位継承においての諸儀式・行事などの望ましいあり方について専門分野の学識者などによって検討を重ね、これまで六回に亙り見解・要望を提示してきた。今回の見解は、御代替りに伴ふ一連の諸儀式の最後となる立皇嗣の礼にあはせて発表すべく準備が進められてきたものである。
 すでに二月十日の衆議院予算委員会において菅義偉内閣官房長官は、政府部内では「事務方が有識者から個別に話を伺ふなど、最近の議論の動向などを踏まへて検討をおこなってゐるところだ」と答弁してゐる。今回の見解における提言が、政府の今後の検討に裨益し、皇室に関心を有する多くの人々の参考となることを期待したい。



 皇位の安定的継承は、まさに国家の基本であり、その維持を図るのは天皇を補佐する内閣の責任である。諸外国においては王統が断絶したり、王位継承者がなくなったりした場合の対応として、憲法などで規定してゐる事例も見られるが、王室を一旦離れても、王位継承権はなほ保有する国もある。万世一系のわが国はそのやうな規定を持たず、また皇族の範囲が皇室典範で定められてをり、皇族の身分を離れれば皇位継承権を失ふ制度となってゐる。
 現在、皇位継承者は継承順位第一位の秋篠宮皇嗣殿下、第二位の悠仁親王殿下、第三位の常陸宮殿下の三方しかをられず、安定的継承のためには、悠仁親王殿下と同世代ないし次の世代の男子皇族を確保する道を早目に開いておくことが重要となってくる。
 今回の見解で示された提言の大事なところは、皇室の歴史伝統と現行の憲法・皇室典範に基づき、皇統に属する男系男子が皇位を継承する、といふ変へてはならない基本原則と、変へられない、また変へる理由もない現皇族の継承順位を基本前提とした上で、かつて皇族だった旧宮家の男系男子孫が皇族の身分を取得し、皇族間の養子を容認して現宮家との養子縁組を可能とする道を開く皇室典範特例法などの制定を提案してゐることである。その実現には、まづ法律を作り、具体的な皇族の身分取得などについてはその後、皇室の御意向なども伺ひつつ、深く静かに時間をかけてことを進めるのが賢明な方法ではないかと思はれる。



 皇位継承は、何より皇室の制度に関はる問題であり、憲法と皇室典範といふ国法上の最重要な事柄なのである。それは個々の利害や価値判断を基本にして議論が戦はされる政治的問題とはおのづと異なる。それだけに政府は、広く有識者や関係者などから慎重に意見や考へを聴取し、よく検討した上で国民の理解を求めるべきである。
 また斯界においても事柄の十分な理解に努め、安定的な皇位継承の実現を図るべく尽力していかねばならない。
令和二年五月四日

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