文字サイズ 大小

論説 夏越の大祓と新年度 清新な精神・環境で万全を

令和2年06月29日付 2面

 神社界における七月の新年度を前に、各地の神社ではまもなく夏越の大祓が執りおこなはれる。
 大祓は六月と十二月の年に二回、心身の罪や穢れを祓ひ清め、清々しい心持ちで新しい生活の第一歩を踏み出すべくおこなはれる行事で、古くから伝はる風習でもあるといへよう。形代を用ゐて祓ひをおこなふとともに、六月に固有の行事として茅の輪くぐりの神事を伝へてゐる神社も多い。
 心身ともに清らかであることを理想としてきたわが国において、常に罪や穢れを意識し、神助を得ながら浄明正直の姿に立ち返るべく大祓を続けてきた先人たちの姿勢を真摯に顧みたい。

 新型コロナウイルス感染症の影響により、全国各地の神社では参拝者や祈祷数の減少といった厳しい状況にある。さうしたなか、疫病消除の祈念を淵源とする祇園祭で知られる京都・八坂神社では、疫病退散を願って今年は三月初めに境内に茅の輪を設置。さらに特別神事「国家安寧祈願 祇園御霊会」を三度に亙って斎行し、感染症の早期終熄と国家の安寧を祈願してゐる。このほか各地の神社でも感染症鎮静化への祈りをこめて、茅の輪の早期設置や茅の輪をモチーフとした特製のお守りの作成・頒布など、夏越の大祓に因んださまざまな取組みがおこなはれてゐる。
 今回の感染症の蔓延に際しては、かうした夏越の大祓との関はり以外にも、疫病の鎮静祈願などに関する神社の歴史・伝承等を踏まへた神事や行事なども執りおこなはれてゐる。未曽有の危機のなかではあるものの、真摯な祈りを反映した地域のさまざまな信仰の歴史、先人たちの歩みを見つめ直す一つの機会にもなってゐるのではなからうか。
 今年の夏越の大祓に際しては、感染症の鎮静祈願を掲げて神事を執りおこなふやうな事例が見られる一方、感染防止の観点から神職のみでの祭典奉仕としたり、参列者同士の間隔を確保するため屋外での斎行に変更したりする神社もあるやうだ。いづれにしても、地域社会における精神的な核として、また心の拠り所として、引き続き神社が人々の心の平穏に寄与できるやう各種の取組みに期待したい。

 夏越の大祓を終へて迎へる七月は、神社界にとって新たな令和二年度の始まりにあたる。神社本庁では現在、恒例の五月定例評議員会に代はり、書面決裁による常任委員会において新年度予算などが審議されてゐる。ただし、感染症による全国神社の経済的影響に鑑み、常任委員会後に歳入歳出予算全体を再検証した上で、十月定例評議員会において補正予算を上程するとの方針がすでに示されてをり、負担金をはじめとする最終的な予算額の決定にはまだ時間がかかりさうだ。
 感染症の第二波・第三波への懸念がなかなか払拭できないなか、各地の神社における具体的な影響や今後の見通しなどは不透明で、その全体的な把握は決して容易ではない。さうした状況下での負担金を含めた予算の再検証には、大きな困難がともなふことは想像に余りある。とくに限られた予算をいかに配分するのかは、要するに神社本庁の活動として何を必要とし、何を期待するのか、これまでの活動の見直しを通じて優先順位・要不要を判断するもので、神社本庁の役割・意義を構成員自らが問ひ直す営為ともいへる。さうした活動成果の検証は、かうした非常時に限らず平素から不断におこなふべきこととはいへ、今回はとくにシビアな作業にもなるのではなからうか。役員・評議員・事務局をはじめ関係者が叡智を結集し、斯界として最善の結論を導き出してほしい。

 いづれにしても、今年は当初予算全体の再検証を経ての補正予算編成を企図するといふ異例の状況のなかで新年度を迎へることとなる。予算の見直しを含めた感染症の影響への対応はもとより、本宗と仰ぐ神宮の奉賛活動の推進、不活動神社対策、過疎地などでの神社振興対策、さらには後継者問題とも関はる神職の養成・研修の充実等々、かねてからの課題も山積してゐる。
 さうした対応に万全を期すためにも、まづは夏越の大祓でこの半年間の罪や穢れを除き、浄明正直を理想とするわが国そして神社界本来の姿に立ち返った上で、清新な精神・環境のもと新年度に臨みたい。
令和二年六月二十九日

オピニオン 一覧

>>> カテゴリー記事一覧