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論説 疫病流行下の水害 平穏・安寧を齎す祈りを

令和2年07月20日付 2面

 七月三日以降、日本付近に停滞した前線の影響により九州地方を中心として広範囲で大雨となった「令和二年七月豪雨」は、熊本県をはじめ各地に大きな被害を齎してゐる。六日には福岡・長崎・佐賀、八日には岐阜・長野でも大雨の特別警報が出され、九州南部・北部地方、東海地方、甲信地方では七月の月降水量平均値の二倍から三倍となる記録的な大雨に見舞はれるなど、予断を許さない状況が続いた。
 河川の氾濫や土砂災害などにより多数の犠牲者が生じてをり、家屋の倒壊や浸水、橋や道路・鉄道などインフラの被害も甚大だ。神社関係においても、熊本・青井阿蘇神社をはじめ各地から被害報告が届いてゐるが、その全容把握にはまだ時間を要することが見込まれてゐる。
 まづ以て犠牲者に哀悼の誠を捧げるとともに、被災者にお見舞ひ申し上げるものである。

 七月二十三日からは「海の日」と「スポーツの日」を含めた四連休となり、被災地には復興支援のボランティアも多く訪れることになりさうだ。少子高齢化が進む地域においては、さうした支援活動はとても心強いものとならう。ただ、新型コロナウイルス感染症の拡大防止の観点から、ボランティアの募集を県内在住者に限定するやうな動きも見られてをり、県境を越えての活動参加においては事前に現地との十分な連絡を心掛けたい。
 新型感染症の影響については、避難所においてもいはゆる「三密」を避けるやう配慮が求められてゐる。自然災害による被災といふ非常時において、感染症への懸念もあるなかで、不自由な生活を余儀なくされてゐる被災者の心労・心痛は想像に余りある。
 神社界においても、神道青年全国協議会が各単位会との連携のもと支援物資の搬入などをおこなってゐるとのことだが、さうした後方支援などを含め、工夫を凝らしつつ被災者の心に寄り添ふやうな活動展開に期待したい。

 そもそも今週半ばからの連休は、東京オリンピック・パラリンピック競技大会の円滑な準備及び運営に資するため、「国民の祝日に関する法律」の特例が設けられたことにともなふものだ。当初、七月二十四日には東京五輪の開会式が、また八月九日には閉会式が予定されてゐたことから、今年に限り七月二十三日を「海の日」、七月二十四日を「スポーツの日」、八月十日を「山の日」とするものである。
 周知の通り東京五輪については新型感染症の影響により延期され、すでに開催期間を来年七月二十三日から八月八日までに変更することが決まってゐる。東京五輪の開催にあたっては、海外から訪れる多くの外国人たちに日本文化への理解を深めてもらふ機会と捉へ、斯界関係者も尽力してきた。一年間の延期とはなったものの、その無事開催を切に望むものである。ただし、戦後の祝祭日の改変の影響もあり、昨今はややもすれば祝日を単なる休日とのみ認識する傾向も見られ、とくに、その日付が安易に変更されることの問題も指摘しておきたい。

 新型感染症に関する報道が見られるやうになってから、半年ほどが経過した。五月末に緊急事態は解除されたものの、都内では再び多くの感染者が確認されるやうになってをり、感染拡大への懸念は払拭できてゐない。さうしたなか、本来であれば東京五輪の開会式がおこなはれるはずだった連休を前に、広範に亙って豪雨災害に見舞はれ、被災地では感染症の影響が被災者のみならず復興支援のボランティアにも及んでゐる。
 歴史上、先人たちは数々の自然災害を経験し、また疫病等にもたびたび苦しめられるなか、さうした人智を超えた事象にも神々の存在を認め、畏敬の念を抱いて困難に立ち向かってきた。かうした神々への畏敬については、平成二十三年の東日本大震災において改めて注目されたが、あの大震災から早くも来年で十年となり、その間にも各地で自然災害が相次いでゐる。
 まづ以て新型感染症の収束、そして速やかな被災地復興を祈るとともに、先人の歩みを踏まへつつ、常に人々の真摯な祈りに寄り添ひ、日々の営みに平穏・安寧を齎すことができるやう、神社・神職としてできることを見つめ直したい。
令和二年七月二十日

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